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57話:生姜焼きと本音 ページ10

「おばちゃん、お手伝いに来ました!」

「あら、早かったのね」



勝手口からひょこりと顔を覗かせると、おばちゃんが笑顔で迎えてくれる。



「私のできる仕事がなくなってしまって。何をしたらいいですか?」

「そうねえ、でもここも粗方終わっちゃったのよね」



おばちゃんの言葉に調理台を見ると、大きな器の中で大量のお肉がタレに漬け込まれていた。

生徒達がやってきて注文し始める少し前に焼いていくらしい。



「洗い物をお願いしてもいいかしら」

「わかりました」



生徒達から食べ終わった食器が渡される前に、調理器具を洗わなければならない。

私はグッと力強く頷くと、濡れ布巾を手に取った。






「Aちゃん、皆が来る前に先にお昼にしちゃいましょ」

「はーい」



水場から食器が全て片付いたところで、おばちゃんに声をかけられる。

生徒達が来てしまってからでは、忙しくて食べている暇がないらしい。

何にせよ、落ち着いてご飯が食べられるのはありがたい。



「いただきまーす」



パン、と手を合わせると、おばちゃんが笑顔で頷いてくれる。



今日のお昼のメニューは豚の生姜焼き定食だ。

横に盛られた千切りキャベツが、口の中でシャキシャキと音を立てる。

付け合わせは昆布豆である。

程よい塩気がご飯に合う。



……ホント、おばちゃんのご飯最っ高。



「Aちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるわよね。作りがいがあるわ」

「ふぇ? ほうへふか(そうですか)?」



口いっぱいにお米をかき込んだせいでもごもご言いながら、私は首を傾げた。



「えぇ。Aちゃんがどんな顔して食べてくれるかなって考えると、作るのがとっても楽しかったわ」



ありがとう、と優しく笑うおばちゃんに、私も微笑み返す。



「……皆にもまた、Aちゃんみたいに笑顔で食べてほしいんだけど」



調理場の方へ戻るおばちゃんの、思わずといった風に漏れたその声色があまりに寂しくて、私はそっと目を伏せた。

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わそ姉大好きリスナー - Ahoy 学校行きたくねェェェェェェ 続編に出航〜♪ (2023年1月25日 9時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!忍たまって鬼滅並みに難読苗字多いですよね笑。尼子先生の出身地の尼崎の地名から取っているそうなのですけれど、私も最初は漢字と読みがなかなか一致しなくて困りました。食満は初見じゃ絶対に読めないと断言できますよね! (2022年8月12日 19時) (レス) id: 23eb6548af (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - マジで夢主ちゃんに同感です。食満って名字、最初は「しょくまん」って読んでしまいますよね。私もアニメで聞くまでしょくまんだと思ってました! (2022年8月12日 19時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:真白 | 作成日時:2022年4月28日 21時

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