【忍たま】本が読みたい私のそれどころではない室町生活2

71話:所在地 ページ25

「それでは善法寺さん、私はそろそろ行きますね。他の委員長にも書類をお渡ししないといけないので」

「伊作でいいよ。言いにくいでしょ。皆もたぶん委員会活動中。ここから近いのは、校舎の一階の会計委員会室と図書室かな」



……図書室！



その言葉だけでテンションが上がってくる。

にこにこ笑顔になった私を見て、伊作さんがクスクスと笑った。



「ありがとうございます、伊作さん。私のこともぜひ、天女ではなく名前でお呼びください」

「わかったよ。Aちゃん、でいいかな？」



私は満足げにニカッと笑う。


こういうところが子供っぽいと思われる所以なのかもしれないけれど、天女様呼びをいつまでも続けられるのは勘弁してほしいのだ。


ペコリと頭を下げて医務室を出ると、伊作さんに言われた校舎を探してキョロキョロ辺りを見回した。



……あれ？



見覚えのある景色に、私は目をまたたく。

昨日案内された私の部屋が真向かいの長屋にあった。



……昨日の夜、仙蔵さんはわざわざ私を自分の部屋まで運んだよね。



医務室がすぐそこなのだから、そちらに連れて行けば良かったのに。


私が医務室は嫌だと言ったせいだろうか。

それとも、自分の部屋にしかない薬だったからだろうか。

何にせよ疑問は残る。



……後で書類持って行く時に聞かなくちゃ。



校舎は私の部屋がある長屋の向こう側にあった。

私の部屋の前を通る時、戸が全開にされているのがつい気になって中を覗き込む。

中にいる誰かと目が合ったら気まずいかも、と思ったけれど、中は空っぽで変わらずあの嫌な臭いが立ち込めているだけだった。



……換気してるのかな。



私の部屋として使わなくなったとしても、いつかはなんらかの用途で使うことになるだろう。

そんな時にこの臭いが残っていたら困る、というところだろうか。

それにしては、一向にこの臭いがおさまる様子はないのだけれど。



だが何にせよ、今はとりあえず仕事が優先である。

私は再び歩き始めると、ペラペラと書類を捲っていく。

さっき話に出た会計と図書の委員長が誰か調べるためだ。

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