【忍たま】本が読みたい私のそれどころではない室町生活2

59話:私もやりたい ページ12

そう、思っていたのだけれど。



案外事務室から井戸までの距離は短く、ものの二分ほどで到着した。

近くて良かった。

本当に良かったと思う。

この間、会話は一切なし。

今朝の仙蔵さんとのどちゃくそ気まずいあの数分間が、見た目を変えて再び戻ってきたのかと思った。



「ここが井戸です。この桶を沈めて、これをクルクルと巻き上げたら、水が汲めます」



ようやく口を開いたと思ったら、なんとも事務的な説明である。


私の方が年上だから気を遣われているのだろうか。

今まで出会った年下達は皆私に対して何かと生意気だったから思いつかなかったけれど、その線が濃厚なのだろうか。

数秒唸って首を振る。

それはないな。



「小松田さん」

「は、はいぃ？」



びくりと飛び上がった小松田さんが、声を裏返して返事をする。

それほどまでに驚かなくともよいと言うのに。



「私もやってみたいです。……いいですか？」



胸の奥から湧き上がる好奇心には抗えなかった。

単純な興味と、この機会に小松田さんから私に対する偏見が拭い去れないかな、という打算とが入り混じりながら、私はにこりと笑みを浮かべる。

特に打算の方が顔に出ていないことを祈るばかりだ。



「構いませんよ」



まだ若干引き気味ではあるものの、快く承諾してくれた。

その“引き”は私の圧がすごかったから……とかじゃない、よね。

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