32話:トキメキポイント ページ34
「よし、ご飯にしましょうか。ハンバーグ定食とアジのフライ定食、どっちがいい?」
「アジのフライ定食でお願いします」
食堂内をずっと漂うこの揚げ物の香りは、アジのフライのものだったらしい。
間髪を入れず返事をした私に、二人が堪らず、といった風に笑いだす。
「あら、Aちゃんそんなにお腹空いてたの?」
「違います、シナ先生。ただ、揚げ物のすっごくいい匂いがして……」
ぐうぅぅぅっ。
食堂内に大きな音が響き渡り、私はパッとお腹を押さえた。
「くくっ……。はいはい、アジのフライ定食ね」
クスクスと笑いながら調理場へ消えていくおばちゃんに、私は真っ赤な顔で俯く。
「あっ、おばちゃん、私も何かお手伝いします」
出来上がるのをただデンッと待っておくのも悪いと思い、私はおばちゃんの後を追ってそう言う。
「いいのよ。Aちゃんは今日はお客さんなんだから、ゆっくりしてて」
「え、ですが……」
明日から働いてくれればいいから、とカラッとした笑顔で言われ、私は口籠もった。
「Aちゃん、おばちゃんもああ言ってくれてることだし、こっちでおしゃべりしときましょ」
おいで、と言わんばかりにシナ先生が入り口近くの席をトントンと叩く。
「わかりました」
「明日の朝、Aちゃんに生徒の前で自己紹介をしてもらうことになったの」
シナ先生の横に座って、おばちゃんから出してもらったお茶を一口飲んだところでそう言われ、私は目をまたたいた。
自己紹介とはあれか。
転入生が入ってきた時に黒板の前でやるやつか。
「ほら、いくら学園長先生が勝手に攻撃しないようにって言っても、天女様に反感を持つ子が何をするかわからないでしょう? 一度皆にAちゃんを見せて、害のない人だって周知する方がいいと思うの」
今までの天女様もやっていたしと言うけれど、天女に恨みを持つ人から自己紹介中にグサッとやられてしまうことはないのだろうか。
天女達と違って妖術を使えない私には、生徒達が攻撃してきた時に抗う術がないのに。
「大丈夫。Aちゃんのことは私が絶対守るから」
きゅっと私の両手を包み込むように握ったシナ先生が、強い意志の篭った瞳で見つめてくる。
……そんなこと言われたら、やらないわけにはいかないじゃないですか。
乙女的トキメキポイント最大値なシナ先生に、私は渋々頷いた。
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります!めちゃくちゃあるあるですね!ありがとうございます。参考にさせていただきます! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです! 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません! 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます! (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - (続き)夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね! (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……!! この子とは気が合いそうです! とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい! (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年3月15日 9時