1話:土砂降りの森 ページ3
雨が地面に叩きつけられるように降っている。
頬を伝う水の冷たさで私は目を覚ました。
「え?」
目に入ったのは、雨でぐちゃぐちゃになった土壌と名前も知らない草と黒っぽい木の幹。
「ここ、どこ……?」
むくりと起き上がって周りを見渡すけれど、私の見知った建物は何一つとしてない。
あるのは木。その隣も木。
そして木、木、木。
あと茂み。
世間一般的な表現を使うと、ここは森と言うらしい。
「えっと、どういうこと?」
こうなる前の最後の記憶は、目の前に迫ったトラック。
あの状況で私が避けられたとは思えないし、轢かれてしまったのだろうか。
……ってことは、私死んだの?
救急車で運ばれたのだとすれば、目を覚ます場所は病室のはずだ。
……でも私、生きてるよね。
息を吸って吐いているし、足もあるし、本を読みたいと思える。生きているだろう。
間違いない。
本が読みたい時点で生きているに違いないのだ。
生きていないと困る。
だってまだ本が読み足りないのだから。
「トリップ、した……ってこと?」
誰か他人に乗り移っているわけでもなさそうだし、たぶんそうなのだろう。
そういうことにしておく。
よいしょ、と掛け声付きで立ち上がった私は、ふと自分の身体を見下ろした。
一度家に戻って着替える手間も惜しくて、学校から直接図書館に行こうとしていた私は、トリップしても制服のままだった。
そして土砂降りの中、森の柔らかい土の上に転がっていたわけだから……制服がどうなっているかは言うまでもないだろう。
ぐっちょぐちょである。
「なんでよりによってこんな土砂降りのところなの……。どうせトリップするなら、本がいっぱいあるところが良かった。図書館とか、図書館とか、図書館とか……」
泣きたい気分で俯いていると、目の前の茂みがガサリと音を立てた。
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります!めちゃくちゃあるあるですね!ありがとうございます。参考にさせていただきます! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです! 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません! 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます! (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - (続き)夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね! (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……!! この子とは気が合いそうです! とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい! (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年3月15日 9時