16話:ですからどうか、 ページ18
「ですから私、何としてでも図書室に入りたいんです。図書室で紙の匂いに包まれて本が読めるのでしたら、それで十分満足できます。しばらく現金は結構です。なので、私に図書室の入室許可をくださいませ」
何度も言うが、私にとって本が全てだ。
本さえあれば多少の仕事は我慢するし、本が読めるのなら街に行けなくていい。
街の本屋が気にならないと言ったら嘘になるけれど、手の届く範囲内にある未知の図書室に入るためなら仕方がないと割り切れる。
涙を呑んで我慢するのだ。
けれど、私の本に対する情熱はやっぱり人には理解してもらえないらしい。
私の左に座る文次郎さんが、懐疑的な顔で私を見る。
「あ、もちろん本に落書きをしたり傷つけたりもしません。勝手に持ち出すことも、本の滞納もしませんし、図書室では静かにすると約束します。本を悪用するような真似は決してしませんし、必要でしたら誓約書もお書きします」
ですからどうか、私に本を。
床に両手をついてガバッと頭を下げる私を、庵にいる全員が引き気味に見ているのが雰囲気でわかる。
どうするよこいつ、という空気が部屋中いっぱいに広がったところで、私の右に座る仙蔵さんがスッと手を挙げた。
「学園長先生。発言してもよろしいでしょうか」
「うむ、許可する」
この空気をぶった切ってくれるのならば大歓迎、と言わんばかりに、学園長先生が諸手を挙げる勢いで許可を出す。
何を言うのか気になってそろそろと顔を上げると、こちらを冷めた目で見下ろす仙蔵さんと目が合った。
……先ほどまでのキラキラ笑顔はどこへっ!?
何を考えているのかわからない表面的な笑顔も怖かったけれど、美形の真顔というのもそれはそれで怖い。
私が
「今回の天女様は、ただの本好きで間違いないと思います。この方は山で本を雑に扱った小平太に対し、容赦なく威嚇をしました。私も間者かと疑いましたが、この六人の中で一番考えの読めない小平太に対し威嚇をするような間抜けな人物には、間者は務まらないかと思われます」
黙って聞いていれば言いたい放題である。
間抜けとはなんだ、間抜けとは。
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります!めちゃくちゃあるあるですね!ありがとうございます。参考にさせていただきます! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです! 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません! 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます! (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - (続き)夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね! (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……!! この子とは気が合いそうです! とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい! (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年3月15日 9時