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___ハギに開けてもらった玄関扉をくぐり、Aの着替えなども終わってひと段落がついた現在、俺は新たな問題へと直面していた。
というのも、高熱の影響でどうやらAが幼児退行しているらしい。
さっきハギが俺のスマホで調べてたから恐らく間違いない。
その際のスマホは相変わらず宙に浮いていたが。
それに何より、幼児退行となれば、この妙に幼い言動にも納得がいった。
「39度2分……だいぶ上がったな」
Aの脇からピピピッ、と測り終えたことを知らせてくる体温計を抜き取り、そこに並んだ数字を読み上げる。
熱のせいか、貼ったばかりの冷えピタも心なしか温くなった気がする。
流石にそれは気のせいだろうが。
「A、ご飯食えそうか?」
「うぅ……けほ……」
正直この状態だと粥すらもキツそうだが、多少でも食わせないことには薬が飲ませられない。
取り敢えず作るだけ作るか。
そう思って立ちあがろうとした俺のTシャツの裾を、行かないでとでも言うように、Aの右手が弱々しく掴んでくる。
簡単に振り払える筈のそれに、何故だか今は足が動かなくて。
荒い呼吸の隙間、途切れ途切れの声が俺の名前を呼んだ。
「じ、んぺぇ、ちゃ、……い、いっちゃ、やだ……っ、Aも、いっしょ、いく……ケホッ、こほ、っ」
「そんな状態で何言ってんだ、バカ。すぐ戻ってくるから、お前は大人しく寝てろ」
「や、やぁだ……っ、げほっ、Aも、いっしょ、っ、いくのぉ……っ、ぅぇええんっ」
「っ……あー、分かった。んじゃ、俺が抱っこしてやるから、それで陣平ちゃんと一緒に行こうぜ、な?それなら良いか、A」
「……ひっく、うぐ……うん……」
「ん。気持ち悪くなったらすぐ言えよ」
……おい萩原、お前そばに居るんじゃねぇのかよ。
赤子のようにくずるAを抱き上げて、胸中ではそんな悪態をつく。
___だがその時、不意に開けたままの扉の向こうからは、グツグツと何かを煮る音が聞こえてきて。
Aの背中を軽く叩きながらリビングを覗くと、キッチンの前には、宙に浮いたエプロンと火にかけられた土鍋があった。
その光景を見てすぐに、頭の中で整理されていく状況の数々。
なるほどな。Aがぐずることを察して、ハギが先に作ってたのか。
「……けんじくん……ないない……?」
「いや、アイツならすぐそこに居んぞ。近く行くか?」
「うん……」
まぁ俺にはエプロンしか見えてねぇけど。
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侑(プロフ) - 更新待ってました、!!おかえりなさい!! (2023年3月20日 14時) (レス) @page50 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
みすず。(プロフ) - ふぉわっっ!?!? 待って、久々の投稿っっ!! 好きです!! 更新ありがとうございます!! 元マシュマロ。です! これからもとことん応援、推させて頂きます!!! (2023年3月20日 0時) (レス) @page50 id: 5bbebede5e (このIDを非表示/違反報告)
ふゆな(プロフ) - 更新待ってました!!!!😭 ありがとうございます嬉しいです!!!、!!👊🏻💗 (2023年3月19日 16時) (レス) id: 676d8245fd (このIDを非表示/違反報告)
たむ(プロフ) - はああああ!!!!!久しぶりの更新!!!!!わあああ!!!!ありがとうございます!応援してます!頑張ってくださいいっっ!!! (2023年3月19日 0時) (レス) @page48 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆのみ(プロフ) - この作品を読んでコナンくんにハマりました!主様の全作品の中で1番好きです。もちろん、他の作品も大好きですよ。こちらの更新も楽しみにしてます! (2023年1月4日 23時) (レス) @page46 id: 19928cbf59 (このIDを非表示/違反報告)
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