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『___Aちゃん、あいつを追おう』
指切りげんまんをしたじんぺーちゃんと別れて少したった頃。
緩く着崩したスーツ姿が消えていった方角を見て、研二くんがそう呟いた。
いつになく緊張した空気が辺りに漂う。
追うって言っても、さっきの見た感じ、私じゃすぐにバレてしまう。
追うなら研二くん一人でも大丈夫なんじゃ……?
『俺じゃあいつに干渉出来ないから、出来れば、Aちゃんにも着いてきてほしい。……ダメかな?』
ダメかな、なんて、そんな風に言われたら断れないよ。
不安な気持ちよりも研二くんの助けになりたい気持ちが上回って、私は力強く頷く。
それから、研二くんは普段のおちゃらけた風ではない、堅い口調でじんぺーちゃんが向かう先の推理を披露してくれた。
『あいつがわざわざAちゃんを観覧車に乗せなかったのは、恐らく観覧車に何かがあるからだ。そしてそれは周囲の人間にも被害が及ぶかもしれないものであり、かつ俺が関係している。……ここから考えられるのは、観覧車のどこかに、爆弾が仕掛けられている可能性だ。
Aちゃん、今すぐ観覧車に向かおう』
「う、うん!」
先に行って爆弾の有無を確認してくる、と言った研二くんは、一足先に観覧車の方まで飛んで行った。
私は研二くんのように飛ぶことはできないので、地上を短い足で必死に走る。
単語だけは耳にしたことがある、【爆弾】の二文字が脳裏にこべりついて離れない。
研二くんに関係しているって、どういうことなんだろう。
じんぺーちゃんは一体、何をするつもりなんだろう。
はぁ、はぁ、と息を吐きながらぐるぐると考える。
___『俺とお前、二人だけの約束だ』
もしもこのまま約束破ったら、研二くんみたいに謝ったって、絶対に許してあげないんだから。
そろそろ肺が痛くなってきたところで、漸く観覧車の下まで来る事ができた。
観覧車の下にはじんぺーちゃん以外にもスーツを着た人が何人か居て、仲が良さそうに話してるから、多分じんぺーちゃんと同じ仕事の人たちなんだと思う。
研二くんはというと、空を飛びながら一個一個のゴンドラを確認していた。
その姿が地上からも見えて、バクバクと大きく拍動する心臓を押さえる。
「けんじくん……」
私、ちゃんとじんぺーちゃんのこと、助けられるかな。
研二くんの大切な人、こんな私でも、ちゃんと守れるかな。
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宮野冬姫(プロフ) - 本当ですか!ありがとうございます!! (2022年7月10日 13時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» 分かりました!変更しても物語には影響がないので、水銀レバーに変えておきます! (2022年7月10日 9時) (レス) id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうなんですか!でも、松田は水銀レバーと言っていたので個人的はコナン世界に合わせてほしいです。生意気なこと言ってすみません (2022年7月10日 9時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» コメントありがとうございます!ご指摘に関してですが、現実世界だと水銀レバーではなく水銀スイッチというらしくて、間違いではないです!多分無駄にリアリティーを追求してしまったんでしょうね(笑)ご指摘ありがとうございます! (2022年7月10日 9時) (レス) @page29 id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 028の爆弾のお話、水銀スイッチではなく水銀レバーですよ!! (2022年7月9日 23時) (レス) @page29 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年6月13日 18時