20話 ページ22
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視界の端で、金と赤の髪が揺れた気がした。
自然とその色に惹き付けられて、横を向いた。
あの人がいた。
詰襟の軍服も、白い生地に燃えるような模様の羽織りも、炎の日輪刀も身につけてはいない。
高貴、そんな表現が似合う和服姿で彼は傘をさしていた。
賑やかな屋敷の軒下で、煉獄さんはどこか遠くを見ている。
すると、店から背の高い煉獄さんよりもかなり差を産んで、背の高い銀髪の派手な男性が出て来て、煉獄さんに話しかけた。
艶やかな着物を来た数人の華やかな女性も出て来て、
煉獄さんの腕や肩に体を寄せた。
煉獄さんは怪しく微笑んでいる。
その見たことの無い微笑みに、私は急いで目を逸らした。
「A?濡れちゃうよ」
『ごめんね。強くなる前に早く帰ろう』
そそくさと私は煉獄さんから距離を開けた。
きっと、煉獄さんはあの店に入るのだろう。
違う意味で、「男」だなあ……なんてしみじみ思う。
それは当然か。
『(あんな人でも、花街に行くんだ……)』
この空模様のように、頭に霧がかかった気分だ。
複雑と言えば複雑だけれど、説明しがたい感情に私は困惑した。
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「煉獄?何立ち止まってんだよ」
宇髄に声をかけられて俺はハッとした。
両腕には艶やかな女性二人の腕が巻きついて、いつの間にか傘は畳まれて壁に立てかけてあった。
「杏寿郎さん、随分と久しぶりな気がします」
「お仕事、忙しかったんですか?」
甘い声と香りが俺をくすぐる。
「ああ、だが大事なく終わった」
俺を少し気配を感じて、店の外に目を映す。
「どうかしたのか?」
「いや、知った誰かに見られていた気がしたんだ」
「後追いか?さすがモテる男だなぁ、お前」
「そんなんじゃないさ、きっと」
俺は店の正面に向かう。
女性二人の腰を抱く。
「今日は楽しむとしよう」
きっと、気の所為だ。彼女がいるはずない。
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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時