百日草 (ページ16)

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黒side

顔見知りの先生がいてくれたおかげで、夕方行ったにも関わらずすぐに診てもらえることに。

「腕が痙攣？腕だけ？」

「はい。左腕だけ。今まで朝しかならなかったんですけど今日は仕事中にもなっちゃって。」

「今までってことは何日もその症状続いてるのね？いつ頃から出始めたの。」

「２週間くらい…」

「２週間も前から。それ以外に何か症状は？」

「これと言って無いです。」

険しい顔してる先生。なんかドラマみたいだと場違いながら思った。

先生が、忙しいだろうからと気を遣ってくれて普通ならこんな遅い時間にできないような検査もしてもらえて。ありがたい限りだけれど終わる頃にはヘトヘトだった。

「最後、MRIだけ撮ろうか。ちょっと時間かかっちゃうけど。大丈夫そう？」

「あ、はい。」

MRI？なんかすごく大事(おおごと)になってる気がしてならない。

造影剤を注射されて、かまくらみたいなでっかい機械の中に閉じ込められる。

「出来るだけ身体動かさないでね。あのガラス張りの部屋に先生いるから。なんかあったら手上げて教えて。」

怖くなってきたんだけど。緩くとはいえ、全身ベルトで拘束されてるし、頭の上の機械の威圧感がすごい。

しかもめっちゃうるさいじゃん。頭にガンガン響いて痛い。音を気にしないように、動かないように、いろんなことを考えていたら段々視界が歪んできて息ができなくなった。気持ち悪い、吐きそう。ここから出してほしい。

「はぁっ！せんせっ、はぁ…たすけっ！」

助けてって言いたいのに喋ろうとしても息が漏れるだけで声にならない。

何かあったら手をあげてって言われていたことなんてすっかり忘れてもがいていれば、気づいた時には先生に体を起こされて散々吐いた後だった。