百日草 (ページ14)

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言い訳ページ14

黒side

早起きは三文の徳なんて言葉は真っ赤な嘘なんじゃないだろうか。

そんなことを考えて気を紛らわせる朝。

早起きをして、暖かい布団に潜ったままぐだぐだと時間を過ごすのが好きだった。そんな至福の時間を邪魔する左手。

布団の中で、左手はピクピクと跳ねている。自分で動かしてるわけじゃない。勝手に動くんだ。痙攣ってやつなんだろうなと分かってはいるけれど。なんの理由もなく左手が痙攣するなんあり得ないことだってわかってはいるけれど。

疲れてるだけ。

そう誤魔化して、俺はこの身体からのSOSを無視した。

左手の痙攣などというイレギュラーな事態も、２週間続けば日常になる。

毎朝、勝手に動く左手にちょっとだけ心を逆撫でされるけれど、結局俺はなんともない風に毎日仕事に向かっていた。

「北斗おはよ！楽しみだね今日！！！」

朝からハイテンションな慎太郎を見てなんとなく幸せな気持ちになる。

今年のツアーのリハもいよいよ大詰めで、今日は初めて仮設セットがお披露目になる日。こういう時に素直にはしゃげるところが、俺がSixTONESを好きな理由なんだろあなぁなんて。おじいちゃんみたいなことを考えた。

「この曲でセンステ移動な。歌割り順で縦一列に。」

「ここBメロ入ったらユニットの2人抜けて。」

凄い勢いで指示が飛び交うステージ上。俺がたまらなく好きな空間。

なのに。

「っ！うそだろっ」

メンバーから見えないように、そっとジャージのポケットに左手を隠す。

止めようと思えば思うほど震えが大きくなる左手。段々腕全体が言うことを聞かなくなってきて焦りが募る。

俺は出来るだけ何でもないようなフリをしてステージを降りた。