百日草 (ページ11)

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本来はVIP用の個室だった部屋に２つ並べられたベッド。点滴に繋がれた大我と慎太郎がそれぞれ横になっている。

今朝ケータイを開いたらマネージャーさんから連絡が入っていた。昨日、あのあととても1人では帰れないほど悪化したらしい2人を病院に連れてったら、落ち着くまで入院が決まったらしい。

冷え切った大我の手と、火照って汗が滲んでいる慎太郎の手をそれぞれ握って項垂れていたら、後ろの扉からお医者さんが入ってきた。

「おはようございます。森本さんと京本さんのお連れ様ですよね。お二人のことおはなしさせていただいてもいいですか？」

「あっはい。よろしくお願いします。」

大我は貧血、慎太郎は心因性発熱というやつらしい。

「どちらも疲労と過度なストレスが原因だと思われます。あなたも相当顔色良くないですよ。何かあってからじゃ遅いですから。休憩することも忘れないように。」

過度なストレス…か。心当たりはもちろんある。自分の胃痛に関しても。

でも俺は、北斗のことをストレスと思っている自分が、どうにも受け入れられなかった。

そこから三日間。メンバーの代打を全て引き受け、考えることから逃げるように仕事に打ち込んだ。休め休めとうるさいマネージャーが鬱陶しくて送迎も断り、自分の車で仕事に向かう日々。

誰とも連絡を取りたくなくて、溜まってく通知に見て見ぬ振りをする。

幸か不幸か日に日に頭の回転が落ちていって、目の前のこと以外何も考えられなくなっていくのがわかる。思惑通り、北斗のことも、他のメンバーのとこも考える余裕はない。

現実逃避の日々はそう長くは続かなかった。

日付が変わった頃ようやく仕事が終わって車に乗った直後。マネージャーからの一本の電話。

「髙地！樹が救急搬送されたっ！いつもの病院。すぐに来てくれっ。」