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私は魔王である。


魔王として生まれ、魔王として育てられてきた。

最初こそ魔王の癖に女だと部下に笑われ馬鹿にされたが魔王はどう足掻いても魔王である。
魔族の王たるもの、その様な言葉でいちいち揺らいでいるようでは王の資格は無いのだ。


「例え王だとしても女の指示に従うつもりはねぇよ。」
勇者対策会議で吸血鬼の長である男がそう言った。

吸血鬼は不老で長寿である。長である男も歳の割に見目は若々しい男だ。
長く生きる彼らは強く博識であることから発言力があった。
他の種族の代表も、私が女である事に思う所あるのであろう、誰もその言葉に反論はなかった。

先代魔王には部下は実力で黙らせろと教えられたが、それでは意味が無い。

だから実績で解らせてやろうと画策したのだ。
数ばかりで質の低い武器を回収し、性能も良く長持ちする武器を提供した。
金が無く生活に困っていた巨人族に声をかけ、砦の護衛に就かせた。
武器と守備を強化した事で死傷者は減り、無駄に資金や兵を減らすことは無くなった。

その他諸々の隙のある管理体制を私のポケットマネーで改変した。
おかげで私の懐は随分と寒くなったが、私を魔王と慕い、信頼し着いてくる者が増えたので良しとしよう。

文句を言っていた吸血鬼の長も私を認め、いつしか私の右腕となる存在になっていた。

歴代の魔王達は勇者相手に白星を勝ち取れていない。負け続きである。
だが今度こそ、私の代で魔族を苦しみから解き放つのだ。人間から忌み嫌われ、居場所を奪われ、理不尽に命を奪われる運命から、皆を解放するのが私の魔王たる務めだ、と。
全魔族をまとめ、総勢で自由を手にするのだ、と。

そう思っていたのに…





決戦の時は来た。
魔王は城の奥で勇者の到着を待ち、勇者が来たら「ふははは!待っていたぞ勇者よ!」
と言わなければならないらしい。

私も兵達と共に戦う、と右腕である吸血鬼に言ったが、「それはご法度だ」と言われた。
何故だ。部下が次々と倒されているというのに座って待ってろとはどういう事だ。

そんな事を考えている間に扉が開かれた。

「ふははは!待っていたぞ勇者よ!………??」



なんだそのやたらピカピカ光る剣は

大地の精霊の力?初代勇者の子孫?聞いてないぞそんなもの…!

しかも何故人数が増えているんだ!先代からは勇者は1人で立ち向かってくるとしか聞いてないぞ!
私は1人なのにどうして4人を相手にしないといけないのだ!理不尽だ!不公平だ!

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作者名:A | 作成日時:2017年2月19日 15時

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