第35話 ページ36
『ん…』
いつの間にか眠っていた如月は、朝日の明るさで目を覚ました。窓の外を見ると国会議事堂があり、東京に戻って来たことに気付く。ふわ…と欠伸をした時、右隣の風丸から「おはよう」と声を掛けられた。
『おはよう。あれ、円堂君は?』
ふと風丸の隣に円堂がいないことに気付く。風丸は「円堂なら、ほら」と言って窓の外を指差した。キャラバンのすぐ側にある門の前で、財前総理と円堂、塔子の3人が話している様子が見える。総理の後ろにはSPフィクサーズの面々も立っていた。
『塔子さん、お父さんに会えてよかったね』
「ああ」
総理の塔子を見る目が優しく、如月は悲しそうに微笑んだ。ふと自身の父親と星二郎の2人の柔らかい笑顔が思い出され、窓枠に掛けた手にきゅっと力が入る。風丸は如月と共に窓から円堂達を見ているため、それには気付かない。
「お、戻って来るな」
円堂は総理と握手を交わすと、塔子より先にキャラバンへ向かった。塔子も「パパ、行ってくるね」と総理に軽く手を振って円堂の後に続く。
キャラバンの乗降口で待っていた円堂に、乗り込んできた塔子が「ありがとう、円堂」と微笑むと、円堂は笑顔で返した。つられて塔子も笑顔を見せる。
「よーし、出発だ!」
円堂が元気良く拳を突き上げた。2人が座席に着いてシートベルトを締めると、それを合図にキャラバンが発車する。走り去っていくキャラバンを見つめる総理に、角巣が背後から「どうなさいました?」と声を掛けた。
「いいや。自分にもあれくらい真っ直ぐだった時代があったなと思ってな」
「いえ、総理は今でも真っ直ぐでいらっしゃいます」
「…真っ直ぐでいるのは難しいんだよ」
彼はキャラバンが見えなくなった道の先を明るい表情で見据えた。
雷門イレブンを乗せたイナズマキャラバンは、北海道を目指して進んでいく。
＊
北海道へ向かう道中、山道で突如キャラバンが停車した。強めのブレーキに気付き、それまで談笑していた雷門イレブンは何かあったのかと前方に目を向ける。夏未に「監督、なんで止まったんですか?」と訊かれた瞳子は、シートベルトを外して前に立った。
「狭いバスに乗ってばかりじゃ体が鈍るわ。トレーニングをしましょう」
「皆さんのためのトレーニングメニューもあります!」
瞳子の視線を受け、音無は慌ててノートを掲げた。如月は彼女の様子にどことなくぎこちなさを感じたが、体を動かせることが嬉しくて表情が明るくなる。
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一森(プロフ) - bizyuさん» コメントありがとうございます! そのように言っていただけて嬉しいです…! 更新頑張ります(^^) (12月25日 2時) (
レス) id: a9a946d0de (このIDを非表示/違反報告)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからも一森さんご自身のペースで頑張って下さい(◍•ᴗ•◍) (12月24日 17時) (レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一森 | 作成日時：2023年9月16日 3時
