さよならにブライダルベールを添えて。

2話 ページ4

貴方side



『あれ、今日はふたりとも予定あるの？』



降谷「ああ、今日塾なんだ」



諸伏「俺も親戚の家に行かなきゃならないから
一緒には帰れないんだ、ごめんな」



次の日の放課後、いつもの通り彼らに声をかけると
どうやら先約があったようで。

また明日、と笑って手を振れば、
二人も笑って手を振り返しながら帰っていった。









久々の一人。



隣りにいてくれる景くんも零くんも居なくて
今日は静かな感じで、なんか少し寂しい。

足取りも重く、嫌々ながらも面倒を見てくれている
親戚がいる家に帰るのも億劫で仕方ない。



『寂しいなぁ…』



帰ってもこの時間はひとりだし、帰りたくないなぁ
なんて思いながら歩いていれば、"にゃー"と、
何処からか聴こえてきた猫の鳴き声に足が止まる。

辺りを見回すと、細い路地から出てきた猫。
声の主はこの子の様で、私の足元で止まった。

しゃがんで撫でてあげればゴロゴロと喉をならす。
人懐っこいのか、撫でても逃げない



『君もひとり？…ひとりは寂しいよ、君もそう思う？』



にゃー



返事をするかのように鳴かれた。
夕日に輝く黒い毛の猫は綺麗な金色の眼をしてる。
手入れされたふわふわの毛だから飼い猫かと思いきや
首輪もしてなかったし、爪も伸び切ってた。

可愛いなぁ、野良猫だったら飼いたいかも。

そんなこと思ってたら猫が逃げてしまった。
縛られるのは嫌なのかもしれない。
猫は気まぐれだし、と立ち上がりながら
逃げた猫を目で追う。

猫が逃げた先は、すぐ近くの道路だった。
しかも向こうからトラックが来るけど、
一向にスピードは落ちてくれない。



『っ！』



私はほぼ条件反射で道路に飛び出した。
だって目の前で猫が轢かれるのみたくないじゃん？

猫を抱えて一安心した時、



ﾄﾞﾝｯ!



ぶつかる音がして、私は吹き飛んで
そのまま地面に転がった

身体中痛くて、泣きたくなった
痛いって叫びたくなった

でも、できなかった
身体が指一本すら動かなかった

周りがだんだんと騒々しくなってきて
きゃーっ！叫ぶ女の人の声が聞こえて
救急車っ！って言ってる男の人の声が聞こえて

でもそのうち周りの音が聞こえなくなって

うっすらと眼を開けたとき黒猫の金色の眼が
私をじっと見つめてて猫の眼に血だらけの私が映って

ゆっくりと落ちるように眠くなってきて、
そのまま眼を閉じた










にゃー…










猫の鳴き声が聞こえた

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