結婚のご挨拶 月 ページ7
後ろから聞こえたその怒号は、どこか詩乃に似ているような気がした。
後ろを誰よりも早く振り返った彼女がハッと息を飲む。
「お祖母様...!」
「...お母様、来ていらしたのですか。」
振り返ると、詩乃をまるでそのまま歳をとらせたような老婦人が立っていた。
浴衣に身を包んだ彼女は、穏やかなはずなのに威圧を含んだ目で、彼を睨んでいた。
「貴方は今まで散々詩乃を縛り付けておきながら、結婚さえも自由にさせてあげないのですか!?」
その言葉を聞き、隣の彼女が軽く鼻をすするのがわかる。
しかし彼はまだ引き下がろうとはしない。
「しかしな、お母様っ!」
「その通りでございますっ!!!」
大声をあげたのは彼女の母親だった。
先ほどまで震えていた彼女は何処へやら、もう彼女の目に迷いなどなかった。
「私たちは詩乃をこれまであまりにも縛り付けすぎました!!この時くらい、彼女の好きなようにさせてあげるのが、我々親の役目ではないですか?」
「...。」
言葉に詰まったように黙る彼。
今こそが小生の出番なのだろう。
「絶対に、彼女にも、ご家族の皆様にも、
後悔はさせません。
なので、娘さんを小生に任せてはいただけないでしょうか。
お義父様。」
「...好きにするがいい。」
そう言って応接間から出ていく彼と、それを追いかけていくお義母様。
すると彼女のお祖母様がこちらに近寄り、口を開いた。
「...よく言いきりましたね。それでこそ、詩乃が選んだ男性といったところです。」
「え...はい。先ほどは、ありがとうございました、えっと、お祖母様。」
「お祖母様、私からもお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。」
2人で同時に頭を下げる。
すると頭上から、想像もできないような笑い声が聞こえた。
「ふふ。詩乃。」
「は、はい。」
名前を呼ばれて嬉しそうに顔を上げる彼女。
そんな彼女に優しく微笑みかけ、彼女は口を開く。
「いい旦那様に恵まれましたね。
絶対に、幸せになりなさい。」
「…!はい!」
なるほど。
彼女から常日頃醸し出される人の良さというのは、この方のものだったのか。
また新たな彼女を知った、そんな一日。
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桜月花(プロフ) - cocoaさん» 結婚式の話...そういえば書いてませんでしたね!笑 続編を作るので書かせていただきます!リクエストありがとうございます! (2019年2月8日 5時) (レス) id: 8714acda80 (このIDを非表示/違反報告)
桜月花(プロフ) - Thistle*さん» リクエストありがとうございます!お子さんの2人目ですね!書かせていただきます! (2019年2月8日 5時) (レス) id: 8714acda80 (このIDを非表示/違反報告)
桜月花(プロフ) - 牧村カノンさん» リクエストありがとうございます!続編を作るので、ぜひ書かせていただきます!すごく可愛いネタをありがとうございます! (2019年2月8日 5時) (レス) id: 8714acda80 (このIDを非表示/違反報告)
桜月花(プロフ) - 理鶯&幻太郎LOVEさん» ご協力ありがとうございます!誘拐されたら。面白そうですね!ぜひ書かせていただきます! (2019年2月8日 5時) (レス) id: 8714acda80 (このIDを非表示/違反報告)
桜月花(プロフ) - 俺の愛は前野さんのためにあるさん» ご満足いただけたようで何よりです...!わかりました!続編の方にあげさせていただきます!リクエストありがとうございます! (2019年2月8日 5時) (レス) id: 8714acda80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜月花 | 作成日時:2019年1月21日 17時