結婚しても彼女に嘘は通じません。【夢野幻太郎】

新しい命 乱 ページ38

「詩乃ッ！！！」

大きく声を上げて廊下を走る。何か言っている人がいるが、そんなのは気にしない。彼女の部屋へ向けて走り、角を曲がろうとした時、

ドンっ！

「っ！」
「うわぁっ！」

誰かとぶつかってしまった。

「すいませんちょっと急いでいて...って乱数、貴女...！」
「幻太郎！遅いよ、何度も連絡したのに！」

それは先程連絡をしてきた彼だった。細かいことを説明している暇はないので、彼女の様子から聴くと、彼は顔を曇らせた。

「幻太郎、えっとね...とりあえず部屋まで来て。」

そう言って小生の手を引き走り出す彼。なぜ彼は不安な顔をする、嬉しそうではないのか。小生の心の不安はさらに大きくなっていく。
病室の前で彼は立ち止まり、ドアを開けながら悲しそうな顔で言った。



「幻太郎、ごめんね。


僕も間に合わせたかったんだけど...。」



ドクン。

嫌な音を立てて心臓がなる。間に合わせたかった？まさか彼女は...。

そう思い、慌てて部屋に飛び込む。


するとーー。





オギャアァ！

「...ぁ、げんた、ろう...。」
「.......





よかったぁ...！！！」

そこには弱々しく微笑む彼女と、大きな声でなく赤ん坊の姿があった。


そうか、彼の［間に合わせたかった］とは、小生の到着と出産を間に合わせたかった、と言う意味か。

思わず安堵から彼女の横で崩れ落ちる。
すると彼女はゆっくり小生の頭時手を伸ばし、笑ってこう言った。

「これで、3人、ですね。



これからも、頑張りましょうね、パパ。」
「えぇ、もちろんですよ。





ママ。」


手をにぎり合う2人の横で、小さなその手もまた、母親の手を小さく握りしめていた。

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