君と薄い壁と僕 (ページ3)

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O 3 ページ3

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彼は俺に気付いたのかこちらを向くなり
ニコリと微笑んだ。

… 綺麗。
彼の第一印象はこれだった。

儚くも、しっかりとした存在感に
凛とした表情。

たまにフワリとしたオーラを出しながら
俺に向かっておいでおいでと手招きを繰り返す。

幽霊 …
とかそんな感じが全くしない彼に
俺はどんどん引き込まれるように近付いて行った。

「ねぇ、名前は？」

初めて聞く君の声。
少し鼻にかかってて、
けど甘さを含んだ低い声。

『藤ヶ谷 … 太輔。君は？』

「俺は … 北山宏光。」

宜しくね？
と手を差し伸べて来るんだけど
カーテンが邪魔で触れら.れない。

めくろうとすると駄目だと止められてしまう。

恐らく彼は、免疫力が無いのだろう。
だからこれは予防なんだ。

16歳 … 成長した俺は少なくともそう感じた。
だから …

『握手 … じゃないけど、ん。』

「え … ？あ … ふふ」

薄いカーテンに手を当てて、
君には触れられないけどって
握手の代わりにカーテンの上から君と手を
重ねてみた。

嬉しそうに微笑む君が、今の俺にとっては
物凄く愛おしかった。

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