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暖かい陽気を感じて、目を開ける。
視界に飛び込んで来たのは、一面の花畑だ。
その花畑の真ん中に、俺一人だけ、ポツンと座っている。
『………』
黄色、白、ピンク、赤、青……
色とりどりの花が何処までも咲き乱れている。
死んだかもな。
自分でも引くレベルで冷静だった。
なんか…“死んだのかぁ…”って言う感じの感想しか出てこなかった。
その場に立ち上がってみる。
暖かい風が頬を撫でる。春を連想させる風だ。
花びらが舞い、蝶が羽搏いている。
花の柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。
現実でも、こんな陽気感じた事はない。
本当に死んでしまったようだ。
近くにあった川に何となく近寄ってみる。
覗き込むと、魚が優雅に泳いでいた。
勿論、俺の姿は写らない。足元を見ても、影はつくられない。
『死んじまったなぁ……』
そうポツリと呟く。
その瞬間、頭が割れる位に痛んだ。
『う“あッ……!!??』
そして猛烈な吐き気に襲われた。
何で。
死んだあとも苦しむのか?俺は……。
「あなたはここへきてはだめ」
誰だよ。
声からして女性だ。
「あなたには、あなたを必要としてくれる人“達”がまだいるわ」
はぁ……?
『ふざけるなぁッ…!!!!』
いつの間にか、叫んでいた。
『何も知らないテメェが俺の事知ったような口聞くんじゃねぇよ!!』
誰かも分からない、何処に言るかもわからない声に向かって叫ぶ。
『何が“俺を必要としてくれる人達が居る”だぁ!?知るか!!俺の事結局見捨てて何処かへ行くんだ!』
『仮にいたとしてもなぁ!?知ったこっちゃねぇ!そっちはそっちの都合だ!なんで俺が関わらなき
ゃいけねぇんだよ!!』
『俺は迷惑事に巻き込まれるのは嫌いなんだ!!だからよぉ!このまま死んだっていいだろ!?』
肩で息をするくらい興奮してしまった。
しかし、返事はなかった。
その代わり現世に連れ戻されるように、突然地面に穴が空いてそこに吸い込まれていくように落ちて
しまった。
『くそ野郎がぁ…!!!』
身体が逆さまになって落ちていく。
穴に落ちていく最中に、誰かが穴を覗き込んだ気がしたが、その時には俺の目はもう閉じていた。
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作者名:モンエナ子 | 作成日時:2022年9月19日 21時