この薄汚れた世界の中で【2nd.】 (ページ17)

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#37 瀬戸際(安元side) ページ17

さて､どうしたものか｡

血塗れのゴム手袋を外し､ぽつりと呟く｡
目の前には酸素マスクをつけ､腕から何本ものチューブを伸ばしたA｡

その顔は純白のシーツに溶け込んでしまうくらい白く､蝋人形を彷彿とさせた｡
そしてその隣のベッドには穏やかな表情で眠る福山｡
彼の首筋にも毒々しい紫が入っている｡

遊佐｢まさか､コイツもなんてね｣
｢盲点でした｡Aが止められたのが救いです｣
遊佐｢ま､その代償は大きかったようだけど?｣

＿＿＿＿彼の首筋に刻まれた紫もまた､罪の記憶｡
でも､

｢生きてりゃ､こっちのもんですよ｣
遊佐｢まぁそうなんだけどねぇ｣

この話は､数時間前まで遡る｡

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

間島から無線が入った15分後｡
いつになく真剣な表情をした小野が転がり込んできた｡

小野｢安元､Aが危ないかも｣
そう言ってベッドへ横たえられたAのシャツは､べったりと赤い血で染まっていた｡

｢これ､全部Aの?｣
小野｢そう｣
だとしたら､相当危険だ｡

｢じゃあ､処置すっからお前ら…｣
近藤｢待って､こっちも!｣
ぜいぜいと息を切らした近藤におぶられ､隣のベッドにごろりと転がされる塊が1つ｡

近藤｢外傷は無いけど､クスリ打たれてて｣
｢何の?｣
近藤｢あの､えと｣
『あ､りす……』
か細く聞こえた声の主を見ると､

『ALICEの､劣化版…解毒剤､打て…げほっ､』
噎せると同時に､ごぷり､と小さな口から鮮血が溢れ出る｡

小野｢Aちゃん､喋っちゃダメ!｣
『じゅん､は悪くない……私､がわる』
遊佐｢分かったから､お前は黙れ｣
『ん…じゅん､を､頼んだ』

それがコイツの最後の言葉｡そこから数時間､2人とも電池が切れたように眠り続けている｡

その間に止血やら解毒やらいろいろしてた訳だけど｡
まぁ､大丈夫そうだ｡"片方"は｡