この薄汚れた世界の中で

#24 狙い狙われ(杉田side) ページ47

中村｢……流石に俺もビビった｡急に来るんだもん､あいつ｣
杉田｢俺もびっくりしたよ｡音だけだったから余計に…あ､悠一くん死んだかもって｡あんなにドキドキしたの､出会った時以来だった｣

『そういえば､杉田さんは何でMagnetに居るんです?小野さんも言ってましたけど』
中村｢あ､それ聞いちゃう?｣
眉を下げ､少し悲しそうな顔をする中村さん｡
まずい事聞いてしまったかな


杉田｢悠一くん､そんな顔しないのｗ大丈夫だから｡えっと､それはね＿＿＿＿｣

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿


7年前｡俺はフリーの情報屋として働いていた｡
いろんな所にお邪魔して情報を得て､一番高く買ってくれそうな組織に提供する｡情報を捌いては逃げ続ける毎日｡


悠一くんと会ったのは､そんな時｡

場所は､偶然立ち寄ったBARで
?｢よぉ､お前が杉田智和?｣
｢……そうだけど､どちら様?｣

返答する間もなく隣の席に座ってきた1人の男｡
切れ長の目､キュッと閉じられた口､目にかかりそうな長さの前髪､心地よい高さの声

全てにおいてかっこよかった
…別に返答が遅れたのは決して"新たな扉を開きそうだ"とか邪な事考えてたからじゃないからな｡


?｢俺?俺は…中村だけど｣
｢中村くん､ね｡宜しく｣
中村｢あの､俺が言うのもなんだけど｡……何か､こう､思う事は無い訳?｣
｢俺を殺しに来たんでしょ?｣
中村｢じゃあ何で逃げな｣
｢中村くん､ゆっくり後ろ見れるかな｣
中村｢?…あぁ｣


彼が視線を向けた先には､こちらの様子を伺う男達｡各々酒を手にしているが､全く減っていない｡

杉田｢君から逃げた所でアイツらが居るのね｡"プロ5人vs俺1人"なんて無理ゲー｡なら…初対面の君に言うのもおかしいけど､イケメンに殺されるなら本望というか｣
酔った勢いで､捲し立てるように話し､後は引き金を引かれるのみと､目を閉じる｡



だが､いつまで経っても音はせず｡
思い切って目を開くと

中村｢くっ……くふっ……ふはっ｣
必死で笑いを堪える中村くん｡
え?何で笑ってんの

中村｢杉田さん､だっけ?面白いね……気が変わった｡
何されてもいいならさ､一緒に生きてくれる?｣
別にそこまでは言ってないんだけど｡
その言葉を正そうと彼の顔を見ると､

ニヤリと悪い笑みを浮かべながら銃を構え＿＿＿見張る輩の頭を撃ち抜いた｡

｢は?!ちょっと何して｣
中村｢行くぞ｣

俺を軽々と持ち上げ､路地裏を駆け抜ける彼の横顔は




今まで出会った人の中で誰よりも美しかった｡

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