花火を見上げる金魚。

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藤 ｢･･･帰ろっか｣


北 ｢えっ！？｣


藤 ｢これ多分ザーッと来そうじゃない？｣









そう言って空を指差し、

首を傾げながら少し笑う貴方はいつも通りのようで、









北 ｢なぁ、今の、｣


藤 ｢ほら行こ。今ならまだ電車も空いてるかもよ｣


北 ｢ちょ、｣









でも、明らかにいつもと違った。









藤 ｢･･･｣


北 ｢･･･｣









振り返らずに人混みを掻き分ける貴方に、

さっきの話の続きは？と引き止めたいのに、

貴方の背中が声を掛けるなと言ってるようで、

待てよと手を伸ばすどころか声も出せなかった。









北 ｢･･･ｯ｣









だけどその歩みを止めなきゃ、

なんだかその背中はどこか遠くに行ってしまいそうで、









『ﾄﾞﾝｯ』


北 ｢あ、すみません、｣


『ﾄﾞﾝｯ』


北 ｢あ、ごめんなさい、｣









祭をまだ回る人の波に必死に逆らい、

俺は尖って出る貴方の袖の裾を掴んだ。









藤 ｢！？｣


北 ｢置いてっちゃやーよ！｣









きっとぎこちない笑顔だった。

でもこれが俺の精一杯だった。

少しでも空気を変えたくてふざけたように言った。



貴方はハッたしたような顔をしたあと、

俺に合わせるように少し笑い、

そして｢ごめん｣と言うと俺の肩をグッと引寄せた。









藤 ｢ぶつかるよ｣


北 ｢お、おぅ、ｱﾘｶﾞﾄ･･･///｣









貴方に抱き寄せられ縮こまる俺の肩。

人混みと貴方の腕と貴方に挟まれ、

嫌でもさっきまでの不安を他所に胸が高鳴った。



礼を言うのに見上げると、

思った以上に貴方の顔が近く、

思わずマジマジとその顎ラインとかを見てしまった。









藤 ｢ﾌﾌ、立ち止まらないでよ｣


北 ｢ぁ･･･、わりぃ･･･///｣









ハッと我に返り貴方の隣に並ぶと、

貴方は自分の袖口を摘まんで差し出し、









藤 ｢ここ掴んでなさい｣









って優しく微笑むから、

いつもの俺ならガキ扱いするなって言っただろうが、

貴方が馬鹿にした言い方をしないかったから、

貴方が何処かに行ってしまいそうで怖かったから、

俺は大人しくその袖口を摘まんだ。









藤 ｢･･･｣


北 ｢･･･｣









その後暫くは会話はなかったが、

俺は貴方の少し、ほんの少し後ろで顔を綻ばせていた。



摘まんでる袖口に目をやると、

まるで手を繋いでるみたいだったから。

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