花火を見上げる金魚。

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藤 ｢それにしても暑いねぇ･･･｣


北 ｢なぁ〜･･･｣









毎年暑さが和らぐ頃に行われるこの花火大会だが、

今年は流石災害級と言うべきか、

もぉ16時だってのにまだまだ立ってるだけで暑い。









『ﾊﾟﾀﾊﾟﾀﾊﾟﾀ』


藤 ｢ふぃ〜･･･｣









どこかで配ってたであろう団扇で、

甚平の胸元や肩に指をかけ扇ぐ貴方。









甚平･･･、俺なんかより全然似合ってる。









元々綺麗な首筋がより綺麗に見えるし、

扇ぐ団扇の奥に見える褐色の鎖骨や肩が凄く色っぽい。









藤 ｢ん？扇いでほしい？(笑)｣









なんかズルいなぁ。

貴方は全然｢和｣な顔じゃないのに何でも似合って。

俺なんか着た姿を鏡で見て中坊みてぇって思ったのに。









藤 ｢涼しい？｣









団扇の風に乗って鼻を擽る貴方のいつもの香水。

送られてくる生暖かい風よりその香りが、

まとわりつく湿度を吹き飛ばすぐらい心地良かった。









貴方の傍にいると言う心地よさ。









北 ｢もっとぉ〜〜｣


藤 ｢えぇ〜自分でやってよ〜(笑)｣


北 ｢やだよ、あちぃもん｣


藤 ｢もぉ〜俺も暑いんですけどぉ〜(笑)｣


北 ｢あ〜〜すずしぃ〜〜(笑)｣









貴方に会うまでは今日が少し憂鬱だった。

進める1歩が終わりへの1歩になってしまうから。



だけど、今は不思議と幸せだ。

言葉通り、水を得た魚のように。



今のうちに泳いどかねばと、

貴方の団扇の動きに合わせて俺は袖を揺らした。









北 ｢あ〜〜早く着かねぇかなぁ〜｣


藤 ｢まだまだだよ(笑)｣









ねぇ、早く行こう。

走って行こうよ。









北 ｢ビール買ってぇ〜、からあげ買ってぇ〜｣


藤 ｢たこ焼き買ってぇ〜｣


北 ｢あ、かき氷も食いてぇなぁ〜｣


藤 ｢イカ焼きとかもいいよねぇ〜｣









そんでどっか真向かいで座れるとこを探そう。

いつもの飲み会の時のように。

金魚鉢を眺める貴方と貴方を眺める金魚のように。









そんでこの目と記憶に焼き付けさせて。









祭りならではの物を食べてる貴方を。

祭りならでは格好した貴方を。

祭りならでは楽しみ方をしてる貴方を。









そんな貴方の夏を俺にちゃんと残したいんだ。









ねぇ･･･、流れる汗も時間も、

この人混みの中を歩くスピードみたいならいいのにね。

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