花火を見上げる金魚。

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『ｶﾞｻｯｶﾞｻｯ･･･』


『ｶﾁｬ･･･』


北 ｢･･･｣









その夜、家に帰って買った甚平を広げ、

ハンガーを通し、壁にかけた。









北 ｢･･･ｽｩ･･･｣









貴方の持っていた商品券で買って貰った甚平。

会計時に貴方が持っていたからか、

吊るした甚平に鼻を寄せると貴方の匂いがした。









北 ｢いい匂い･･･｣









俺はそうゆうの詳しくないから、

香りの元がなんなのかよく分からないけど、

貴方に凄くよく合ってるってのは分かる。









これは･･･、ズルい香りだから･･･。









鼻の奥を刺激し過ぎず、

毎日の湿気とか吹き飛ばしそうな爽やかな香り。

貴方の優しさや笑顔によく合ってる。









北 ｢ｽｩ･･･｣









でもこの香りがクセになるのは、

その爽やかさが心地いいからじゃない。









北 ｢･･･ﾌｩ｣









爽やかさのあとに残る甘い香りのせいだ。

吸い込めば吸い込むほどに感じる甘さ。









北 ｢ｽｩｩ･･････、ﾌｩｩ･････｣









まるで貴方のようだ。

貴方のようにズルい香り。

だから貴方によく合ってる。









北 ｢･･･｣


『ﾄﾝ･･･』









吊るされる甚平に頬を寄せ壁に寄り掛かり、

目を閉じれば貴方に寄り掛かってるようだった。









北 ｢･･････いい匂い｣









貴方ほど暖かくはないけど、

貴方にしては固すぎるけど、

それでも貴方の香りがするから･･･









.









だから･･･、貴方に寄り掛かってるようだった。









.









『ｶﾀ･･･』


北 ｢･･･ﾌｯ｣









こんな自分をイタイと思う。

また恋に恋しちゃってんなって、また笑えてくる。









北 ｢･･･楽しみだなぁ｣









でも離れられなかった。

吊るした甚平の前から。



いくら見たって、触れたって、

楽しみだと呟いてみても甚平は何も返してくれないけど、

でも虚しいとは感じなかった。



記憶の中の貴方が笑いかけてくるから。



｢楽しみだね｣って今日笑ってたし、

多分当日は｢楽しいね｣って笑うから。









北 ｢たのしみ･･･｣









虚しくはない。

ただちょっと寂しいだけ。









北 ｢あと･･･｣









花火大会まで何日だ？

と振り返ってカレンダーを見てみた。

するとカレンダーは教えてくれた。

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