検索窓
今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:65,344 hit

171 ページ39

.



種田の執務室の奥に、少し広い部屋がある。危険な為、窓は無いが快適。何日かは普通に生活出来る

そんな部屋で、Aが一人でPCを打っていた。何も悟らせない目で、ただ一心不乱に。



あの後のAは迅速だった

窓から病室を脱し、誰にも見られずに種田の執務室へ到着。事の一端を話して、種田に部下を動かしてもらった



それから数時間経って、もう直ぐ陽が昇る。執務室には主である種田に、遠藤と聖が居た

先刻まで坂口も居たのだが、彼は昨日の夜のAを知らないのだ。無論、異能は遣わせなかった

三人は円になるよう坐り、茶を啜って話していた





「___え、諸に鳩尾に喰らったんですか…」


「死ぬかと思った…部下に起こされた時、暫く動けなかったし」


「はっはっ、あの娘の凄さを思い知ったか」


「笑い事じゃないですよ!俺が彼奴の攻撃を避けられる訳ないでしょう!」


「はっはっは!」





只の団欒である。



漸く遠藤の愚痴に終止符が打たれ、種田の笑いも治まった

却説、ここからが本番だ。A本人から訊いた言動の意味等は、種田しか知らない





「自分は自分の侭で居ると、あの娘は約束した。だから好きにさせた」





種田はそう云って茶を一口飲み、息を吐いた

そして二人に前置きする。怒らず聞けよ?と。





*





「我儘かよ」


「Aはお人好しだな」


「はっはっは!呆れたか!」


「怒る気満々だったんですけどね」





種田の前置きに従って、二人は黙って聞いていた。終わった途端に出た感想は雑だった

自分の考えに反対されるから、という理由で聖と離れた。誰にも相談せず、催眠瓦斯が充満する場所へ自ら足を踏み入れた

それは悪いことだ。彼女の優しさが生んだことで、叱るべきだ

でも、二人は懐かしさで呆れた。Aは昔からこういう奴だった、と。それは種田も同じだった





「Aさんらしいです」


「そんな彼奴が好きなんだもんなー」


「ちょ、からかわないでください!」





少々気分が昂っている遠藤が、聖の肩に腕を回す。恐らく寝ていない所為だろう

種田はそれを察して、少し寝ろ、と云った。聖が奥の部屋に目を向ける





「…まだ、仕事ですか」


「嗚呼…今は一人が好いらしい」





静かな暗い部屋から、Aが出て来る様子は、微塵も無かった



.

172→←170



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (59 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
232人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

夢蝶蘭(プロフ) - 知佳さん» わざわざありがとうございます!是非使わせていただこうと思います! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - 横浜の街のタワーは、展望台になりますが、マリンタワーというのがありますよ♪ (2020年4月4日 0時) (レス) id: 3e74e0ac2c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年4月2日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。