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種田の執務室の奥に、少し広い部屋がある。危険な為、窓は無いが快適。何日かは普通に生活出来る
そんな部屋で、Aが一人でPCを打っていた。何も悟らせない目で、ただ一心不乱に。
あの後のAは迅速だった
窓から病室を脱し、誰にも見られずに種田の執務室へ到着。事の一端を話して、種田に部下を動かしてもらった
それから数時間経って、もう直ぐ陽が昇る。執務室には主である種田に、遠藤と聖が居た
先刻まで坂口も居たのだが、彼は昨日の夜のAを知らないのだ。無論、異能は遣わせなかった
三人は円になるよう坐り、茶を啜って話していた
「___え、諸に鳩尾に喰らったんですか…」
「死ぬかと思った…部下に起こされた時、暫く動けなかったし」
「はっはっ、あの娘の凄さを思い知ったか」
「笑い事じゃないですよ!俺が彼奴の攻撃を避けられる訳ないでしょう!」
「はっはっは!」
只の団欒である。
漸く遠藤の愚痴に終止符が打たれ、種田の笑いも治まった
却説、ここからが本番だ。A本人から訊いた言動の意味等は、種田しか知らない
「自分は自分の侭で居ると、あの娘は約束した。だから好きにさせた」
種田はそう云って茶を一口飲み、息を吐いた
そして二人に前置きする。怒らず聞けよ?と。
*
「我儘かよ」
「Aはお人好しだな」
「はっはっは!呆れたか!」
「怒る気満々だったんですけどね」
種田の前置きに従って、二人は黙って聞いていた。終わった途端に出た感想は雑だった
自分の考えに反対されるから、という理由で聖と離れた。誰にも相談せず、催眠瓦斯が充満する場所へ自ら足を踏み入れた
それは悪いことだ。彼女の優しさが生んだことで、叱るべきだ
でも、二人は懐かしさで呆れた。Aは昔からこういう奴だった、と。それは種田も同じだった
「Aさんらしいです」
「そんな彼奴が好きなんだもんなー」
「ちょ、からかわないでください!」
少々気分が昂っている遠藤が、聖の肩に腕を回す。恐らく寝ていない所為だろう
種田はそれを察して、少し寝ろ、と云った。聖が奥の部屋に目を向ける
「…まだ、仕事ですか」
「嗚呼…今は一人が好いらしい」
静かな暗い部屋から、Aが出て来る様子は、微塵も無かった
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夢蝶蘭(プロフ) - 知佳さん» わざわざありがとうございます!是非使わせていただこうと思います! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - 横浜の街のタワーは、展望台になりますが、マリンタワーというのがありますよ♪ (2020年4月4日 0時) (レス) id: 3e74e0ac2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年4月2日 23時