流れ星やっつ。 ページ8
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こちらに向く2つの瞳が、ただ静かに俺を見つめていた。
ここに来てから初めて真面にかみ合う視線に、何故か嬉しさがこみ上げる。
意味もない笑いが、流れ星が流れるように呆気なく零れた。
きらきらと。流れ星のように、痛いくらいに純粋な光を宿す瞳には俺以外何も映っていなかった。
「…まだ、決まってないの。」
ついさっきまで星の欠片をまぶしたように輝きを放っていた声は、
静かに静かに言葉を発した。夜の闇に跡形もなく溶けていったそれに、思わず苦笑してしまう。
何か、彼女も思うことがあるんだろうか。星に奪われていたはずの心が、今では
俺に確かに向いていて、そのことにほんの僅かに心を満たす嬉しさが可笑しかった。
「日取り、決まったら教えてよ。」
休み、取らないといけないから。
そう、微笑んでみせた。目の前ではもう数え切れないくらいの星が流れていて、
あまりの綺麗さに今、ここに自分がいることさえ偽物のような気がしてくる。
目を細めた。この星の輝きは、あまりにも綺麗すぎる。眩しすぎる。
ゆっくりと鼓動を刻む心臓は、全てを見通すかのように無言で動き続けていた。
「……翼。」
ん?横を見れば、まだ彼女の視線はこちらを向いていた。
『せっかくの流星群、見なくていいの?』あえて言葉に出さない俺は、きっと性格が悪い。
彼女の真っ直ぐな瞳も、この流星のように眩しい。けれど眩しいのに、俺は
真正面から彼女を見つめ返していた。何年経っても変わらない真っ直ぐで、
凛とした目に何故か切なく心が締め付けられる。それすらも知らない彼女は、
僅かに昔の面持ちを残した顔をほんの少し歪めながら俺を見つめていた。
「面白い話、してあげるよ。」
えっ、と。彼女が俺を不思議そうに見つめたのが分かった。
彼女自ら作った沈黙を壊した俺に、彼女が僅かに瞳を揺らす。
それに微笑みを投げかけて、俺は空を見上げた。
未だに空を流れる星達を見つめながら、かつてその星の、
一番近くに行きたいと願ったことを思い出す。
幼かった頃の、初めて抱いた夢。
「昔、一人の少年がいました____、」
それは、一人の少年の現在までの話。
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K - 誰との結婚式ですか? (2019年8月18日 20時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
yossy(プロフ) - とても綺麗で切ない作品でした。黒猫での翼の気持ちとこの作品での翼がリンクします。大好きなK'Sシリーズ。これからも楽しみにしています。 (2018年12月29日 3時) (レス) id: ce568f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
0 - あと、kobato*さんの作品一覧表を見させていただきましたが、パスワードがけっこう掛けられていたので、少し残念です。もしよかったら、作品を公開していただけないでしょうか?勝手なお願いで申し訳ありません。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
0 - ありがとうございます!もし書けたら、タイトル教えてください! (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 0さん» 0さん、コメント本当にありがとうございます。今はなんというか…書きたいものの書ききって小説からは遠ざかっていたので0さんのコメント本当に嬉しかったです…!どれくらい時間がかかるか分かりませんが頑張ります! (2018年9月24日 14時) (レス) id: da506c070e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年7月22日 19時