流れ星ななつ。 ページ7
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堰を切ったように流れ出す、幾数もの星達。きらきらと、黒いキャンバスに光る粉を
撒き散らすかのように流れる儚い煌き。一瞬の輝き。ずっと、なんて。
言葉を嘲笑うかのように刹那を流れる星は、分かっていてもずっと見ていたくなってしまう。
分かっている。分かっているのだ。けれど、願う。
今、この瞬間、この場所で、この時間が。ずっと、ずっと。
続けばいいと。永遠に、この時間が終わってほしくないと。
(ずっと、流れていてほしい)
止むことなく。この、儚くも美しい煌きが。続いてほしい、と。
願わずには、いられないのだ。この、現実的でもなく不可能な願い。
ロマンティックで、三流恋愛小説で使い古されてきたような願いが、もしも叶うのなら。
そうしたら、きっと______
「…持っていかれちゃいそう。」
ポツリと呟いた彼女に、思わず笑う。
その目の中にも既に流れている星に、彼女は気づいていないのだろうか。
「何、目?心?」
「ぜんぶ。」
夢の中をさ迷っているかのように、幸福に溶かされた声が甘く鼓膜に張り付いた。
「全部、持っていかれちゃいそう。」
星の輝きに、魅せられたみたいに。それと同種で、それとはまた違う何かに、
俺の視線は確かに惹きつけられる。彼女が放つ煌きも、いとも容易く揺らしてしまう琴線も。
何もかも、彼女には、分からないんだろう。可笑しくて、思わず笑った。
寝転んだ草は、まだ僅かに太陽の匂いを残していた。
小さい頃から、星を見上げると何故か素直になれる気がした。
太陽が昇っているときには中々口に出せない感情も、言葉も。
周りの視線に晒されているときには取れない行動も。
星の前でなら、安心して出来る自分がいた。
ほんとに、何の力持ってるんだろ。今でも、その答えは出ない。
優しく吹く風にも。空に流れる星達にも。静かに鳴き声を響かせる鈴虫にも。
全てに、安らぎを覚えている自分がいた。これ以上ないくらいに穏やかな心情を見つめて、
俺は微笑む。
「ねぇアーヤ。」
自分の手によって覆われた視界。何にも見えない真っ暗の中で、
俺の声はやけに柔らかく響いた。
「結婚式、いつ?」
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K - 誰との結婚式ですか? (2019年8月18日 20時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
yossy(プロフ) - とても綺麗で切ない作品でした。黒猫での翼の気持ちとこの作品での翼がリンクします。大好きなK'Sシリーズ。これからも楽しみにしています。 (2018年12月29日 3時) (レス) id: ce568f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
0 - あと、kobato*さんの作品一覧表を見させていただきましたが、パスワードがけっこう掛けられていたので、少し残念です。もしよかったら、作品を公開していただけないでしょうか?勝手なお願いで申し訳ありません。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
0 - ありがとうございます!もし書けたら、タイトル教えてください! (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 0さん» 0さん、コメント本当にありがとうございます。今はなんというか…書きたいものの書ききって小説からは遠ざかっていたので0さんのコメント本当に嬉しかったです…!どれくらい時間がかかるか分かりませんが頑張ります! (2018年9月24日 14時) (レス) id: da506c070e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年7月22日 19時