流れ星よっつ。 ページ4
．
「美味しい……」
蕩けそうなほどに顔を緩ませながら幸福感を溢れさせている彼女に、口の中に入れていた
きなこの甘みが増した気がした。それを見つめるだけで更に美味しく感じてしまうなんて、
俺も単純なものだ。少しだけ自嘲的な笑みを漏らしながらニコニコと絶え間なく笑みを
振りまいている彼女を、すぐ隣で見つめていられるこの時間に思い切り浸る。
今だけは。この瞬間、この時間、この場所では。
何の気兼ねもなく。何の柵もなく。彼女の隣で、ただただ笑っていられる。
こうして、些細なことで笑みを交すことが出来る。
誰も、何も。俺達に疑問を投げかけてくる人はいない。
何の横槍を入れられることもない。ただただ静かで穏やかな、安心して身を委ねられる空間。
笑顔を見せて、笑顔を返して。言葉を発して、言葉を返されて。
柔らかな絹に、大事に、大事に包まれたようなこの時間が愛しかった。
＿＿＿＿＿例え、それが………、
「Excuse me？」
振り仰ぐと、金髪碧眼でニコニコとカメラを持っているおじいさんがいた。
優しそうなその笑顔を見て、どこか既視感を覚える。
そうだ、サンタクロースだ。初めて出会うのにどこか親近感を持たずにはいられない
その笑みを見つめながら、返事を返した。
「Will you let me take your picture?」
君達の写真を撮らせてもらえないかな？
そういったおじいさんはアメリカの写真家で、日本の風景を撮るために
来日しているんだと人懐っこく教えてくれた。
視界の端であわあわと慌てる彼女を見ると、おじいさんは彼女を安心させようとしたのか
柔らかく微笑む。
「It was a very close couple, so I want to take pictures.」
おじいさんの言葉に、あからさまに彼女の顔が困ったように歪むのが分かった。
どうしよう。そんな言葉が顔に滲み出ている彼女の横顔を見ながら、
何故か自然につり上がる口角をどこか遠くから見つめた。
一緒に沸きあがる、さっきまで食べていたきなこの味を忘れそうになるくらいの
正反対の苦味が、口の中にじんわりと滲んでいくのが分かる。
「Sorry, we are ……」戸惑うように、困ったように笑いながら口を開いた彼女の肩を
抱き寄せた。えっ？というかのように見上げた視線を無視しながら、レンズに向かって微笑む。
「１、２、３……」
カシャリ。瞬くフラッシュを見つめながら思う。
例え、今のこの位置が偽物だとしても、この瞬間の時間は本物だと。
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K - 誰との結婚式ですか？ (2019年8月18日 20時) (
レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
yossy(プロフ) - とても綺麗で切ない作品でした。黒猫での翼の気持ちとこの作品での翼がリンクします。大好きなK'Sシリーズ。これからも楽しみにしています。 (2018年12月29日 3時) (レス) id: ce568f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
0 - あと、kobato*さんの作品一覧表を見させていただきましたが、パスワードがけっこう掛けられていたので、少し残念です。もしよかったら、作品を公開していただけないでしょうか？勝手なお願いで申し訳ありません。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
0 - ありがとうございます！もし書けたら、タイトル教えてください！ (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 0さん» 0さん、コメント本当にありがとうございます。今はなんというか…書きたいものの書ききって小説からは遠ざかっていたので0さんのコメント本当に嬉しかったです…！どれくらい時間がかかるか分かりませんが頑張ります！ (2018年9月24日 14時) (レス) id: da506c070e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kobato* | 作成日時：2017年7月22日 19時
