流れ星ふたつ。 ページ2
．
「緑茶と麦茶と紅茶がございますがどちらに致しますか？」
頬を少し赤く染めながら聞いてきた車内販売のお姉さんに、どうする？と横を振り返った。
と。ポン。タイミングを狙ったのかと言わんばかりに肩に加わった重みに、思わず
苦笑してしまう。すやすやと寝息を立てている彼女は、勿論それに気づくことはない。
「紅茶、ください。」
何度か彼女が飲んでいるのを見た事があるペットボトルの名前を告げると、
２つのペットボトルを置いてお姉さんは静かに去っていった。
さっきまではなかった左に加わる重みを感じながら、キャップを開ける。
無意識に左を動かさないように注意を払っていた自分が可笑しくて、
漏れた笑みごと緑茶を流し込んだ。口に広がる僅かな苦さを感じながら、
横を見つめる。完全に夢の世界に旅立っている彼女の無防備さは、相変わらずだ。
丁度脱いでいたジャケットを掛けてやる。ううん、と僅かに体を動かしたあと、
また何事もなかったようにすやすやと寝始めた。俺の肩に、体を寄りかからせて。
「(良い天気だな。)」
どこまでも青い空に、わたあめのようなふわふわした雲が浮かんでいた。
急速に過ぎていく景色は、どこまでも緑色が広がっていて、どこか懐かしい気分になる。
いつも目にしているコンクリートやネオンはどこにも見当たらない。
目に優しい景色は、何時間見ても飽きない。ふと、窓に映る２つの人影見つめた。
安心しきった顔で、肩によりかかる彼女。それを見つめている自分。
ふ、と笑みが零れた。彼女の顔にかかっている数本の髪を攫って耳にかける。
じんわりと広がっていく感情を自分自身で見つめながら、彼女の長い睫毛を見つめた。
左肩に乗せられる優しい温もりに、彼女から伝染したのか眠気が襲う。
「おやすみ、アーヤ。」
眠りへと意識を誘う優しい温もりに抵抗せずに目を閉じた。
彼女のバッグの中で震えるスマホに気づかないふりをして。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
K - 誰との結婚式ですか？ (2019年8月18日 20時) (
レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
yossy(プロフ) - とても綺麗で切ない作品でした。黒猫での翼の気持ちとこの作品での翼がリンクします。大好きなK'Sシリーズ。これからも楽しみにしています。 (2018年12月29日 3時) (レス) id: ce568f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
0 - あと、kobato*さんの作品一覧表を見させていただきましたが、パスワードがけっこう掛けられていたので、少し残念です。もしよかったら、作品を公開していただけないでしょうか？勝手なお願いで申し訳ありません。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
0 - ありがとうございます！もし書けたら、タイトル教えてください！ (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 0さん» 0さん、コメント本当にありがとうございます。今はなんというか…書きたいものの書ききって小説からは遠ざかっていたので0さんのコメント本当に嬉しかったです…！どれくらい時間がかかるか分かりませんが頑張ります！ (2018年9月24日 14時) (レス) id: da506c070e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kobato* | 作成日時：2017年7月22日 19時
