医神と行く地獄巡り2【呪術廻戦】 (ページ10)

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散らすように消えた人間を眺める。
随分と、弱くなったものだ。

己が見たかった人間はこんなにも脆かっただろうか。
彼女が言う人間は強く儚く尊いものだと聞いたはずなのに。

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かの人型は過去に聖杯を手に入れた者であった。
特に理由も無く。特に願望も無く。
契約上、主人がそれを望むなら手に入れる事は容易かった。
抑止力を経由し、神から人へ、無銘の人型であり、その前後には名誉など無いのだ。
ただの気まぐれにも過ぎなかった。利害が一致したから承諾した。
滅ぼうともどうでも良かったのだ。
どんなに善人がその人型へ説いたとしても、その人型には心底どうでもいいのだ。
滅ぶなら滅べ。死にたければ死ね。結果として出来上がった生物に何も興味は無い。
己が気づけば他の神々が居て、他の生物が居て、他の世界があっただけなのだから。

寄るな触るな。こちらも干渉しないから放っておけ。を貫いていた。

人間が嫌いだった。反吐が出るほどに、苦虫を潰すかのように嫌悪感を抱いていた。
子供は7歳までは神の子供なのだ。その7歳も満たない娘を◼◼の父は当然の如く生贄、触媒としたのだ。
人型は喚ばれてしまったのだ。
更にはその主人の正常さも引き換えに。故にかの人型は嫌気がさしていた。

彼女が此方へと自主的にやってきたと同時にその父を圧縮した。
少しずつ骨を折り内臓を潰しまるで布を手折るように。
そしてそれは影に飲み込まれて終わった。彼女は契約通り己の贄となった。
なれば書き換えて、記憶改竄もしよう。
彼女も彼女の家族も、救いたかった姉も含めて全て死んだのだから。

彼女は二度死んでいる。

足掻く度にその四肢を切り落として、二度殺している。
傍にいた医神が蘇生して治す度に致命傷を負わせて。
彼女ともう一人のマスターが来る度に、諦めがつくように何度も。
その夜諸共、その場諸共、願い諸共。
あの時から敵として、壁となり天敵となり。
きっと、何かが癪に障った、それ以外は解らない。

………この記憶はもう良いだろう。消去しておこう。

はて、彼女はあれからどうなったのだろうか？
俺が死んでからはもう10年は経っているはず。

桔梗が機能している所を見ると、まだ生きているだろう。

「人間味を、覚えてしまった」

白い呪術師が来たと同時に影が大きく己を被さっていく。
少しだけ見えたその表情は何処か迷いが見えた。

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