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Secret track No.9 ページ27

楽しかった時間は

あまりにも早く過ぎていく。

*

「やだぁああぁぁあぁあ」
「こらこら、泣かないのA」
「ははは、すまないね、一二三くん、独歩くん」

私は5歳となり、彼らは17歳となった。
私たち家族は、都内からヨコハマへと引っ越すことになり、2人は見送りに来てくれた。
しかし、当の私は離れる寂しさのあまり泣いてしまい、両親や彼ら2人を大層困らせた。

「大丈夫っすよ。やー、でも嬉しいなぁ。こんなに寂しいって言ってくれてさ」
「ヨコハマから近いし、また会え──いや、むしろ俺がAちゃんと出会わなければ、今こんなに泣くこともなかったんじゃ……俺のせいか……ああ、しまった、俺の、俺の……」
「もー独歩?しっかりしーろーよ!お前のせいじゃねぇって!また癖出てるぞー!そんなんだったらひふみんも泣いちゃうぞー?えーん!」

一二三くんはケタケタと笑いながら嘘泣きを始める。私はまだ泣きじゃくりをしていたが、叫ぶことはやめていた。

「ほーら。おじさんもおばさんもいるだろ?ひとりじゃないから。俺っちも、また会えるって。だから泣いちゃだーめ!な?」

彼は私に目線を合わせ、笑いかけた。
ずっとずっと、年の離れた人なのに、何故かいつも私に構ってくれていた2人。
独歩くんも、私の手を握りながら、言う。

「働けるようになって、1人でヨコハマ行けるようになったら、また会いに行くから」
「え!?独歩1人抜け駆けずりー!俺っちもいくかんな!待ってろよAちゃんっ!」

ビシリと指さして、一二三くんは言う。
独歩くんは鬱陶しいという表情をしながらも、微かに笑っていた。

「ふふ、楽しみね、A」
「住所はそこに書いている通りだからね。またAに会ってやってくれ」

両親も、楽しみだ、というふうに笑っていた。

「……また会える?」

泣き腫らした目で、私は尋ねた。

「あったりまえじゃん!」
「……勿論」

2人は優しい顔で告げた。

「「またね」」

もう、泣かなかった。
寂しくなかった。

きっと、また何処かで会えるから。

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ゆゆ - あと銃兎さんと独歩さん推しなのが一緒で嬉しかったです! (2019年5月26日 14時) (レス) id: b6b1790fec (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 初コメ失礼します!銃兎さん登場回数多めですね笑銃兎さん最推しなのでめっちゃ嬉しいです!お話も読みやすかったです!また来ますね! (2019年5月26日 14時) (レス) id: b6b1790fec (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 名無しさん» 申し訳ありません。修正箇所を見落としているのですが、もしよろしければ場所を教えて頂けないでしょうか (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花さん» ありがとうございます!楽しんでいただけたら嬉しいです!いってらっしゃいませ〜! (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 名無しさん» あららら、ご指摘ありがとうございます! (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エレン | 作成日時:2018年2月9日 7時

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