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岩本side
何やってるんだ、俺。
我に返ってすぐにAから離れる。
岩｢ごめん、｣
困惑した表情で俺を見るA。
｢...なん、で？｣
岩｢...え？｣
｢なんで、キスしたの...？｣
岩｢...それはっ｣
俺は馬鹿だ。
ここで素直に｢好きだ｣と伝えればよかったんだ。
それなのに
岩｢...ごめん｣
謝ることしか出来なかった。
静かに涙を流すA。
それを見て心がズキンと痛んだ。
そしてAはそのまま出ていってしまった。
その背中を追いかけることなんて出来なかった。
岩｢...部活行かなきゃ｣
ゆっくりと立ち上がってそこをあとにする。
教室の前に来た時、阿部の声が聞こえた。
そして、教室を出てきたAとすれ違う。
そのまま教室に入れば、焦った表情の阿部と
異様なくらい冷静な佐久間。
阿｢お前、Aといたの？｣
岩｢...いたよ｣
阿｢あいつになんかした？｣
ゆっくりと近づいてくると俺の肩を掴んだ。
岩｢...言えねえ｣
阿｢...そうかよ｣
なにか言いたそうにしていた阿部だが
Aを追うように教室を出ていった。
佐｢あららー、荷物置きっぱじゃん...｣
笑いながら座り込んで作業を始める佐久間。
岩｢...お前はなんも言わねえの？｣
俺の言葉に顔を上げる。
佐｢...何を〜？何泣かせてんだよって？｣
その鋭い視線に体がぞわりとする。
佐｢...なーんちゃって｣
口角を上げてもそこには不気味さしかない。
岩｢...お前が考えてること、分かんねぇわ｣
佐｢別になんにも考えてないけどね〜｣
そう言いながら俺の方を向くことなく淡々と手を動かし続ける。
岩｢...なあ｣
佐｢んー？｣
岩｢お前、Aのこと好きなんじゃねえの？｣
俺の言葉に佐久間の手が止まる。
岩｢なんであんなに、冷たくしてんだよ｣
佐｢...なんのこと？｣
岩｢とぼけんなよ、｣
佐｢俺は別に好きな人いないよ？｣
どうしてこいつは
自分の気持ちに嘘をついているんだろう。
佐｢...そんな目で見ないでよ。俺が可哀想みたいじゃん。｣
岩｢でも、｣
佐｢ほら、部活行かなきゃ｣
俺の言葉を遮った佐久間は
わざと壁を作っているようだった。
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作者名：なあや。
| 作成日時：2020年6月28日 2時
