[Elext City] Ⅱ (ページ14)

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阿部「もしラウールがあのバグを取り逃がした事を思ってそれを言っているんだったら、もう気にしなくていいよ」
ラウール「そう、じゃないんです」
阿部「じゃあ何で？」
言葉は柔らかく、されど先程と違ってほんのり冷たさの混じるその声は、何かを口出しする事を止めるような、そんな気がした。

ラウール「…調べました。ここの、昔の事件の事」
阿部「…そう」
ラウール「だから、阿部さんが[Elext City]を絶対に成功させたいのは、わかるんです」
阿部は何も言わずにその視線をまた更に冷たいものに変え、続きを促した。

ラウール「でも、僕、今の阿部さんがわかりません」
例えば、向井があの時零していた「あのバグを本当に消去していいのか」という話。
そう、彼が言っていた通り、あれが「バグそのもの」ではなく、「バグに巻き込まれたプレイヤー」の可能性だってあるのだ。
それなら、消去してしまって後からプレイヤーの死亡が確認されました、とか、そんな事になってしまえば、それこそ、阿部が1番切に願っている[Elext City]の成功も叶わない訳で。

それでも阿部はまるで最初からわかりきっているように、バグの消去を進めているのだ。
自分に最初、バグの情報を掴んでくるように仕事を割り振って、ある程度情報を集めたら「もう大丈夫」と言ったのも、もしかしたら何か知っているのじゃないか、なんて。

明らかに恩を仇で返すような真似に、ラウールだってこの1週間近くずっと葛藤していた。
けれど、今のまま進んでしまうのは、どうも間違っているような気がしてならない。
せめて、知りたい。知って、証明して、確信を持ってから、ちゃんと正しい方向に進みたかった。