[Elext City] Ⅱ (ページ15)

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阿部は今ラウールが何を言おうとしているのかも大体わかっているような雰囲気を出していた。
この場で頭をぐるぐる回転させ、必死に言葉を紡ごうとしているのは自分だけなんじゃないか、そう思ってしまうようなたたずまいだった。
ラウールから発せられる言葉に、阿部は何も言わない。
その無言すら、怖かった。

ラウール「…阿部さん。何が、どう進むのが正しいかなんて、まだ未熟な僕にはわかりません。…それでも、今の阿部さんの進む方向は、間違っているんじゃないか、って、…そう、思ってしまったんです」
阿部「…そっか」
飼い犬が手を噛むような、そんな言葉を述べたにもかかわらず、阿部は何の感情もないような、興味のなさそうなたった3文字を吐いて、自分の席へと座った。
「じゃあ好きにして」なんて言いたそうな、少なくとも自分はそう解釈した。

ラウールは、システム開発部を出ると向井のいる広報部にまで入る。
向井「あれ？ラウどしたん？また不具合のコピー？」
ラウール「違います、向井さんに、お願いがあって…」
向井「お願い？」

事の次第を話すと、向井は驚いた様に目を丸くさせた。
ラウール「…僕、裏切っちゃいました。…恩知らずですよね」
向井「ラウ…」
ラウール「ごめんなさい。向井さんは、僕のおかげで阿部さんが丸くなったって仰ってくれましたけど…僕は、やっぱり何も出来なかったです」
向井「あ、あかんよラウ、自分の事責めんといて？」

向井は心配そうにこちらを窺いながら、ラウを自分のデスク前に座らせた。
ラウール「え…？」
向井「好きに使ってええから、情報収集でも、何でも、…俺もラウの言う「正しい方法」とかわからへんけど、ラウに協力したい」
ラウール「向井さん…」

きっと彼にも思う事はあるのだろう。
FukaかHikaか、どちらかわからないけれど、いなくなってしまった彼の同期の事とか、この[Elext City]にかける思いとか。
ラウールは、向井のパソコンに文字列を打ち込んでいく。
それを向井は、ただじっと見守っていた。

『何でも構いません、情報を下さい。お願いします』