[Elext City] Ⅱ (ページ12)

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ラウールは、それからも向井が話してくれた事件について1人で調べてみた。
それこそ、仕事がとんでもなく忙しい…事態が事態なのだから仕方ないのだが、仕事の合間にちょっとずつ調べて、仕事をして、の繰り返し。
1度、大人気の歌い手ユニットのメンバーのTwitterがバグに乗っ取られた時は、向井が涙目で「お問い合わせが～」と言っていたのでこちらも必死になって改善させた。

それでも、その隙間時間に調べただけでも、例の事件については知る事が出来た。
Starlights社という社名になる前の事故、βテスト中にバーチャル空間に巻き込まれて亡くなってしまった社員の事。
どんな人かまでは分からなかったけど、今の[Elext City]が出来上がるまでに起きた事故の概要くらいは、彼の頭の中に入れる事が出来た。

それと同時に、1つ浮かんだある仮説。
この[Elext City]のNPCを作ったのは松村だ。
加えて、向井の話を聞くに、松村はその事故に巻き込まれた同期ととても仲が良かったという。

ラウール「…」
阿部が会議で席を外していて、松村がNPCの点検をしにDIVEしに行っているある昼下がり、ラウールは松村の席で前見かけた、不自然に伏せられた写真立てが気になっていた。
別にやましい事をする訳でもないのに、少しだけ申し訳ない気持ちになる。
確認、するだけ。ラウールはそっとその伏せられた写真立てを上げた。

ラウール「…やっぱり…」
漏れ出た小さな声は、どこか自分の中でも腑に落ちるような声だった。
写真立てに映っていたのは、ラウール自身も見た事のない笑顔を浮かべている松村と、黒色の髪で雰囲気は違うものの確かにあのJuriと酷似している顔の人物。

ラウールは写真立てを伏せると、自分の席へ戻る。
そうして1つ息をおくと、再び頭の中で整理を始めた。