[Elext City] (ページ9)

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この後20分ほどすったもんだして、やっと出ていった常連客にフゥ、と息をつくと、date.は1人店仕舞いを始める。
裏口がカラリ、と鳴ったのはその時だった。

date.《……戻るの早すぎんだろ》
それに一切の動揺を見せず、彼は慣れたように裏口から店内に入ってきた男にそう言う。
kochi《ふふ、でももう誰もいないでしょ？》
date.《そうだけど》

kochiはカウンター席に座ると、メニュー画面を操作して何かをいじっている。
date.《で、今日は何が欲しいの？》
kochi《これについて。いくら出せばいい？》
開かれた画面を見せると、date.はそうだね、と唸る。

このバーは、少し特殊だ。
普段は普通のバーだが、閉店した後、不定期に｢情報屋｣となる。
kochiもkochiで、長い時間を[Elext City]で過ごしている為そこらのプレイヤーよりも段違いの情報を持っている。
なのでこうしてdate.とkochiはお互いの情報を交換していた。
他のメンバーは知らない、2人だけの秘密だ。

date.《最近気になる事があるんだけどさ》
kochi《気になる事？》
date.《｢偶像様｣の事》
kochi《あー…俺も一時期漁ってたんだけどね、あそこめちゃくちゃガード固いんだよ》
date.《知ってる。NPCのFukaとHikaでしょ？》
kochi《そ。…下手したらBAN喰らうかもね？》
BGMも消され静かなバーの中で会話をする2人は、宛ら秘密の取引をしているみたいだ。

こうして[Elext City]の夜は──ずっと夜じゃないか、というのは言ってはいけない──更けていく。
その日も何も異常もなく、プレイヤーは各々の時間を過ごしているのであった。

【………■■■、■け■■ゃ、】