[Elext City] (ページ21)

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松村「ねぇ、Juri」
Juri「何？」
松村「あの人の事、どう思ってる？」
彼の顔が引き攣ったような気がした。
それもそうか、こんなに全うから、この話をする事なんてなかった。

Juri「…どう、って……」
詰まらせた言葉に、思慮の念が浮かぶ。
松村「ここは、誰も干渉しないから。…どう思ってるの」
Juri「……正直、辛いよ」
松村「…そう」
思っていた通りだった。松村は、腰に下げていた1本の短剣を彼に手渡す。

Juri「…これ、何？新しいアイテム？」
松村「緊急用」
Juri「緊急…？」
松村「そう。…あの人を見ていられない、って、Juriが思ったなら、…いや、どうしようもない状況になってしまったなら…これを、あの人に突き刺して」
Juri「突き刺す、って…」

殺せって事？
震えた様な小さい声が松村に向けられる。
首を横に振ると、彼はもう1度自分の手に収まっている短剣を見た。

Juri「…突き刺したら、どうなるの」
松村「あの人を救うには、これしか方法がない…ってだけ、言わせてもらう」
彼のネイビーブルーの瞳がこちらを射抜く。
じっと見つめ返すと、彼は小さな声で
Juri「……わか、った」
とだけ零した。

松村「……ねぇ、「樹」、」
Juri「…何」
松村「もし、生きる事が何よりも苦痛だと感じている人がいたとして、」
Juri「えっ？」
松村「…生きる事が何よりも苦痛だと感じている人がいたとして、…それを生かし続ける事が、本当に救いだって、思う？」
Juri「……どういう意味？」

松村「…ごめん、忘れて。…そろそろ行かなきゃ」
Juri「……もう、行っちゃうんだ」
松村「ごめん。…またね、「Juri」」
メニュー画面を閉じて、部屋を出る。
社員専用のシステムメッセージに届いていた「何かあった？」という阿部からのチャットに「少し調整に時間がかかっただけです。すぐに戻ります」とだけ返し、彼はバーチャル世界から意識をログアウトさせた。