いーとみー外伝 (ページ41)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:4,450 hit

９-② ページ41

「安田、お前大学行かないのか」

一年の時に便宜上だけある個人面談。
俺が書いた進路希望の紙に、担任の先生は驚いたように顔を上げた。

「ダメですか？」
「いや…そういう訳じゃないけど」

担任の先生は苦笑して「お前ならけっこういい大学行けると思うんだけどなぁ」と頭を掻いた。
俺は唇を噛むことしか出来ない。

「大学に行きたくないのか」
「そういうんやないんですけど…僕居候なんで、あまりお金使わせたくなくて」
「奨学金って手もあるぞ」
「そこまでして行きたい大学ないです…そのために髪染め直したないし‪w」

無難な言葉を返していく。

学校では、俺は『お金持ちの家に引き取られて執事のバイトしてる子供』だと思われとった。
つまり俺は、仕方なく執事をやってると思われていたのだ。

まさかたかだか齢15、6の子どもが、生涯をかけて執事という特殊な仕事を選び続けるつもりやなんて
しかもその理由が、たった一人の女の子のためやなんて、大人たちは思いもしなかったろう。

「…まあ、色んな奴と関わる中で見えてくるものもあるだろうしな
目的を持って大学に行く奴ばかりでもないし。ゆっくり考えた方がいいぞ」
「ありがとうございます」

にこやかに言いながら、心の中で『変わらないと思いますけどね』と冷ややかに吐き捨てた。