廿陸 ページ25
中島「勤め人」
太宰「違う」
中島「研究職」
太宰「違う」
中島「工場労働者」
太宰「違う」
志賀「正真正銘の溢れ者」
太宰「止めて?」
中島「作家」
太宰「違う」
中島「役者」
太宰「違うけど、役者は照れるね」
中島「うーん、うーん」
見ていて面白くなった志賀が、途中で紛れていた。それに気付いていた谷崎が
谷崎「直哉君、さっき何気に交ざってた…?」
とこっそり聞いた
志賀「面白そうだったので」
谷崎(何か楽しそう……)
この時志賀は、誰にも分からない程度だが、確かに微笑んでいた
志賀が面白い、とか、楽しい、とか云うのはそう多くは無いので、谷崎兄妹はまるで志賀の親のように「良かった、良かった」「そうですわね、兄様」と言葉を交わす
国木田「だから本当は、浪人か無宿人の類だろう?」
――――――「違うよ」
この瞬間、太宰の声音が一段だけ落ちた
だが、声の変化は本当にその時だけで、また先程の様なちゃらけた声に戻った
太宰「この件では私は嘘など吐かない
うふふ、降参かな?じゃ此処の払いは宜しく」
「御馳走様〜」と云って、"喫茶うずまき"を出て行った
中島「あっ」
中島の小さな叫びを聞き、志賀も立ち上がった
志賀「俺も依頼がありました。今回はアイツからの依頼なので、これで失礼します。後中島さん、これ」
中島の手には、百円玉三枚と五十円玉が一枚乗せられた
中島「…?」
志賀「俺が頼んだコーヒー百五十円と、太宰さんが頼んでたカフェオレ二百円の分です」
中島「えっ!あっ、有難う!でも良いの?太宰さんの分迄…」
志賀「大丈夫ですよ、後で払わせますから」
中島「ああ…そう」
志賀「では」
――ピピピピピピピピ
志賀が出て行くと同時に鳴り響いた電子音は、これから起こる第一の怪奇譚の幕開けだったのかもしれない
まあ、その事を今この時点で知り得る者等、この場には一人も居ないのだが
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神楽かな(プロフ) - 面白いですね! (2017年12月12日 1時) (レス) id: 01b9535641 (このIDを非表示/違反報告)
無銘 - ルルさん» 有難う御座います。御礼が遅くなり、申し訳ありません。これからものんびりではありますが、頑張って書いていくので、どうか御愛顧下さい。 (2017年11月5日 17時) (レス) id: 6797fe50b8 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 面白かった!! (2017年10月17日 0時) (レス) id: 5f42220b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無銘 | 作成日時:2017年5月5日 14時