Senra 『ずるいお酒の使い方』 ページ1
.
「だーかーら！そうやなくて、こっち！」
「す、すみません！」
「ホンマ、パソコンできへんなぁ……」
時間は午後の8時すぎ、人もまばらになったオフィス内に呆れたように窘める声と
泣きそうに謝る声の2つが響いていた。
「…ホンマ、ここまでパソコンできへん子も久々やわ…それ以外は完璧なんに。」
「ごめんなさい…」
「あぁほら、謝らんでいいから早く書類仕上げとき。」
「は、はい。」
えー、どうもセンラです。
歌い手の傍らでサラリーマンしてます…いや、こっちが本業やわ。
サラリーマン生活も5年目に入り、ついにセンラも指導する係となりました。
そんなセンラの初めての生徒がこの子。Aちゃん。
こげ茶色の髪に、赤ブチメガネというセンラのツボを押さえてきた有能な後輩ちゃんである。
「折原さん、これでいいんですか…？」
「ん？えぇよーちゃんと保存して、バックアップも取るんやで。」
「はい…！」
彼女の指導を担当してから間もなく2か月くらい。
スケジュール管理も、人当たりも、営業に対してのスキルは多分センラ以上にあるけど
Aちゃんにはパソコンができないという致命的な弱点があった。
パソコンというよりはOffice系のソフトが使いこなせないらしい。
「それ仕上げたら今日は終わりやな……明日は……」
「明日は10時から打ち合わせが入ってますよ。」
「…相変わらずそこら辺はしっかりしてんのな。」
「これくらいしか取り柄ないですから…」
そう言って控えめに笑う彼女。
すごいと思うけどなぁ…センラの歌い手のスケジュールも管理してほしいくらいやわ。
秘書検定1級とかも持ってるからか、言葉遣いや電話対応とかも完璧やし。
派手ではないけど、しっかり整えられた髪や爪に控えめに施されている化粧……
彼氏とか、いるんやろか。なんて思うくらいには惚れているらしい。
「…この後、なんか予定ある？」
「え、特に何もないですけど…」
「遅くなったし、飯でも行こか。」
「…はい！」
そこでその笑顔は卑怯やで……
念の為彼女の書類を自分のUSBに保存しておいてから電源を落とし部署を後にする。
「Aちゃんなんか食べたいのある―？」
「い、いえ特には……」
「っていうか敬語やなくていいって言うたのに。」
「いや、さすがに先輩なので…」
「まじめやなぁ…んじゃ、お酒飲める？」
「飲めます！」
「即答…んじゃ、ついてきぃ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 403人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
