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「すげー...中、入ってみよう」


「開いてるの?」


「分かんない」



岩田が寂れたドアにそっと触れるとその扉は簡単に開いた。窓ガラスは全て割れていて、中は吹きっさらし。



お世辞にも綺麗とは言い難い状況の中でも、前方のステンドグラスだけはきちんと残っていて光が反射してキラキラと輝いていた。




その傍らにあった白いグランドピアノに向かって岩田は歩き出した。私はその後を何も言わずについて行った。





「岩田ピアノ弾けるの?」


「ちょっとだけね。子供の頃習わされたから」


「へえー意外」


「意外ってなんだよ、
Aは弾けないの?」


「私が弾けると思う?」




私がそう問いかけると岩田は首を横に振った。



「お世辞でもうんって言えよ」



岩田の肩を叩くとまた岩田は声を上げて笑った。
そんな岩田の笑い声が大きく響いて、少しびっくりした。




「あ、これ弾けねえわ」



そう言われてピアノを見てみると弦が何本も切れていた。いつもダンスばかりしてる岩田の貴重な姿を見られると思ったのに、残念だ。



「でも、綺麗だねこれ。あんな噂が出回る理由がちょっとわかる気がする。」



私がそう言うと岩田は確かにねとステンドグラスを見上げていった。



壇上に向かって並ぶ木の椅子の一番前の列に岩田が腰掛けて、私もその隣に座った。




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作者名:めいこ | 作成日時:2018年12月14日 22時

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