魔法使いに恋をして【逆先夏目】 (ページ2)

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1.魔法使いと人魚姫ページ2

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この海には「人魚姫」という言い伝えがある。人魚が人間に恋をしたら碌なことにならないと

人魚姫は人間に恋をしてしまった。そして泡となって消えてしまう。悲しい伝説は人魚で知らないものはいない。運命には抗えなかったのか、私も好きになってしまった

「やア、どうかしたノ？」

「いいえ。なんでもないわ」

「それならいいけド」

だから今日も会いにきてしまった。人魚も人間達も集まらない、静かな夜の海岸での秘密の密会。彼の話は面白い。聞いていて楽しい。また話したくなって、ダメだと分かっていながらもきっと明日も来てしまう

「………今日は月が綺麗だネ」

「水の中で見るよりずっと綺麗ね」

「キミにはどんなふうに見えてル？」

「暗い暗い海の底で光が差してきて手を伸ばしたく、手に入れたくなるの」

それだけ言うと真っ直ぐ彼を眺める。私にとっての月は貴方だから。もともとぼやけて見えるのに、逆光のせいでさらに表情が見えない。

大きくて滲んでる月と暗くて見えない彼の表情。2人の間に沈黙が流れる時にも、規則正しく波が音を立てて揺れていた。