はらぺこインキュバス ページ1
「離せ!離せぇー!!!」
加賀美はもちゃもちゃと真っ赤になってふうふう暴れるAをなんとか家のベッドまで担いで運んだ。
やっとありつけたご馳走を目の前で取り上げられたAは涙目、というか号泣していて、顔面がありとあらゆる汁で汚れていた。
「落ち着いてくださいAさん。どうしてあんなことを…こら!布団噛まない、どうどう…」
「ヴゥーーーー!」
「あららら…」
Aはすっかりご機嫌を損ねていて、自分が怒っている事にすら怒っているような様子である。なんとか両手を握り正面から目を見て話す。
「ほら、深呼吸して」
「うー、ッス-…うぅ…」
「よし良い子ですね。ほら、鼻かんで…」
ひとしきり騒いで落ち着いたAは赤くなった鼻の頭を少し気にしながら、視線を長い前髪の奥でキョロキョロと彷徨わせる。バツが悪いのだろう。実際ここまで取り乱したのは半世紀ぶりだったし、半世紀前の大暴れの時は4人殺して普通に実刑を食らっていた。誰も傷つけずにここまで落ち着けたのも加賀美のおかげである。
加賀美はAの長い前髪を掻き分け、めちゃくちゃダサいセンター分けに撫で付けた。これで目が良く見える。
「落ち着きましたか?」
「ぐすっ…うん…」
「ね、目を見て…どうして人なんて襲ったんですか?アナタそんな素振り無かったじゃないですか」
加賀美は左の大きな掌でAの両手をいっぺんに優しく握り込み、右手では分けた前髪を綺麗に整えながら目をジッと覗き込む。濡れて束になった睫毛が震え、Aはとうとう白状した。
「俺、もうはらぺこで限界なんだよ…でもハヤトの友達、みんな良い奴だから襲いたくなくて…だから、だから…」
「……なるほど」
人間界に来て数週間、インキュバスの食事をせずにいたAは、健気にも加賀美の友達からは生気を吸わずに我慢していた。
魔界では感じた事の無い友情に絆されたのだ。その暖かな気持ちはAにとって食事より大切で、絶食に値するものだったのだ。
しかしそれでも腹は減る。酔いの回った頭では、目の前に急に現れた健康そうな男を前に制御が効かずついに襲った、と。
加賀美はふむ、と考える。自分の友達を襲わなかったのは本当に有難い。正直褒めそやして甘やかしたい。しかし何故、この淫魔は…
「私じゃダメなんですか?」
思った事が口からはみ出た、みたいな顔をして加賀美はハタと固まる。違う、こんな甘い言葉を言うはずでは!と目を上げると
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あい(プロフ) - 温帯亭気圧さん» ありがとうございます!誤字ってました…恥ずかしい… (1月5日 21時) (レス) id: 77eb95d78f (このIDを非表示/違反報告)
温帯亭気圧(プロフ) - あいさん» リクエストありがとうございます〜!ちゃんと話を繋いで出来上がるまで少々お待ちください!ご心配もありがとうございます😌 (1月5日 19時) (レス) id: c0418335ef (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - リクエスト失礼します。本社で迷子になってしまっているところをymoiとkndに保護される内容を書いて欲しいです。最後になってしまいますが、いつも楽しく読んで頂かせています。大変なことが多々起こりますが、これからも体調に気をつけて元気に生活費して下さい。 (1月5日 10時) (レス) @page9 id: 77eb95d78f (このIDを非表示/違反報告)
温帯亭気圧(プロフ) - 雨さん» めちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございます😭 (9月9日 22時) (レス) id: c0418335ef (このIDを非表示/違反報告)
雨 - めっちゃ好きです!!!!! (9月7日 12時) (レス) id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:温帯亭気圧 | 作成日時:2023年7月7日 22時