*～箱～*〈約ネバ〉 (ページ42)

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少し時間を遡り、ノーマンが来る10分ほど前

…暇だな

とにかくやることがない

手話は覚えた

練習もした

勉強もした

本も読んだ

ベッドからベッドへ飛んでみたりもした

部屋のなかで軽い筋トレもした

…やることが思い浮かばない

それに、ずっと心は喪失感でいっぱいだ

自然とベッドに寝転がりながら近くに置いていたノートを手に取る

このノートには、私が声が出せなくなるまでにあったこと、聞いたことを書いた

でも、所々穴がある

はっきりと思い出せないのだ

夢(？)の中でみた世界のことの中に、“約束のネバーランド”のことも書こうとしたが、題名と、一話の一部しか思い出せず、あやふやだ

パラパラとめくっていくと、アヤ(彩花)が言っていた言葉を箇条書きにしていたページをみつける

文の途中も一部穴があいている

五個目の文は、全く聞こえず、口の動きだけが見えた

何を、言っていたのだろう

「いああえいあおう」

？？？

口の動きから、そんなかんじだとは思うんだけどな…

しばらく悩み(実際そこまで長くはないけど)、出した結論は

『むーりー。わーかーらーなーいー。』

だった

ノートをベッドの隣の道具入れに入れて、またベッドに飛び乗る

今わかってるのは、きっと私が強く願ったことが原因だろうということだ

自分が死ぬことを恐れたんだ

情けないな

ユウお兄ちゃんの部屋に隠れて、声を殺して泣いて、無自覚のうちに箱を使って逃げ出して…

はぁ、とため息がもれる

情けない

本当に

いっそのこと、もう全てのことを投げ出してしまおうか

自由になんて、なれないのだから

それからしばらく、頭も体も動かさず、ただただボーッとしていた

そして、カチャカチャという音が聞こえてきた