夢中【短編集】 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:99 hit

人形の夢ページ2

ある所に、メアリーと言う人形がありました。
赤いロングヘアーにボタンの目の、ドレスを着た人形でした。

メアリーは、自分の持ち主で、親友の少女が大好きです。
ある時、一緒に船で旅行をする事になりました。
メアリーは海が大好きなので、とても喜びました。

メアリーと少女は船に乗りました。
ですが、メアリーと少女は海が見たいのに、お母さんはそれを許しません。
折角の船なのに、海が見えなければ意味がない。
しょぼくれるメアリーを見た少女は、メアリーを抱っこして甲板へと出ました。

メアリーは身長が小さいので、手すりから身を乗り出さないと海が見えません。
手すりの上にメアリーが乗ると、深くて青い、綺麗な海が見えました。

その時、船が大きく揺れました。
メアリーはバランスを崩し、海へと真っ逆さまに落ちてしまいます。
船へと戻りたくても、これではどうしようもありません。
親友を失った少女は悲痛に叫びます。
ですが、海は無情にもメアリーを連れ去ってしまいました。

海の底でメアリーは思いました。
動く事が出来たら、どれほど良かっただろう。
そしたら、今すぐにでも親友に会いに行けるのに。
メアリーは願います。
ああ、神様。どうか私に命をください。

メアリーの願いは、長い時を経て、ようやく叶いました。
ですが、その頃には、メアリーはボロボロの汚い人形へと変わっていたのです。

それでもメアリーは諦めません。
もう一度、少女に抱きしめられたい。一緒に笑いたい。

その一心で、メアリーは動き出したのです。