『hope for you,hope for me』一 ページ33
中也は少し黙る。
「彼奴は、何考えてやがんだ。何か企んでるのは判る。だが生憎と其方方面はからっきしでな、俺にその先まで見抜く目はねえ。彼奴の思考が読めるのは手前だけだ、太宰」
「……」
「だから教えろ。六院は何をするつもりなんだ?」
中也は、六院のこれまでを断片的にしか知らない。すなわち、ポートマフィアを抜け、そして舞い戻ってきたというだけ。
情報量不足だ。
四年半前、六院は準幹部を返上した。そして身分を隠し、或いは抹消し、武装探偵社で善行を重ねて時を過ごした。
それでも再興してしまった組織の事を知ると、まんまと善の道を抜け、己の目的のために目的を違え、太宰すら出し抜いた。
組織との、因縁の為に。
「例の組織の所為さ。ここ数日で彼に接触があったかい?」
太宰の問いに中也は頷く。
「嗚呼。妙な異能を使う野郎が来たな。六院が斃した。確認はしてねェが、ありゃ仕留めたんだろ。異能も遣わずに」
「どういう異能かな?」
「確か……道化師の蝶、とかいう。他人の姿をコピーするんだよ。異能ごとな」
「コピー能力者……か。あのね中也」
太宰が目を細める。
「例の組織が復活したらしいんだ。紫苑君はそれを改めて壊そうとしている。目下の目的はそれだ。探偵社を抜けたのは、恐らく……殺しの仕事になるから。自分の異能も遣うことになると思って、巻き込まないようにしたのだろうね」
「成程な。あの野郎は昔から、そういうところがありやがる」
「中也。紫苑君から目を離してはいけない。彼は組織の情報を全て集め次第、行動に出るだろう」
「……覚えとく。だが太宰、手前も知っちゃいると思うが、六院は人の言うことなんざ聞くタマじゃねえ。確実に止めようと思うなら先廻りするしかねェよ」
腕を組んだ中也は警告するように目を眇めたが、いつになく渋い表情をする相手に気付くと、クスリと笑みを零して身を翻した。
「……ま、如何しようもなくなったら連絡しろや。悪いようにゃしねェよ」
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資料を捲り、ぱらぱらと必要事項にだけ目を通して、目的の報告書を探す太宰の姿が、閲覧室にあった。
肩で器用に携帯端末を抑え、誰かと通話をしている。
「……分かったのはそれだけ、か。
いや、構わないよ国木田君。揺さぶりたいだけだから、十分だ。ついさっき、新たな情報も入ったしね。
ある異能力者を調べて欲しいのだけれど、あぁ、コピー能力者なんだ」
『hope for you,hope for me』二→←『その背を止められやしないから』六
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リゼ(プロフ) - とても面白くて3週してしまいました(笑)作者様の思い描く物語がどう展開していくのか全く想像できないので、楽しく読ませてもらっております。いつも作者様のこの作品を心待ちにしています!!大変だとは思いますが、頑張ってください。応援しています!!! (2021年7月10日 11時) (レス) id: b15481d520 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» わあああ!!お久しぶりです覚えててくれたんですね!!!(´;ω;`) がんばりますーーー! (2021年6月10日 22時) (レス) id: d65e81f2c3 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わぁあ待ってました!!再連載ありがとうございます!! (2021年6月10日 17時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - ういろうさん» ありがとうございます、遅くなっちゃいましたね。できる範囲で進めていこうと思います。コメントありがとうございました。 (2021年6月10日 2時) (レス) id: 2f72b0193e (このIDを非表示/違反報告)
ういろう - とても面白いです!六院さんの破綻された性格がすごく好きです!!続きも気になりますがあまり無理しないでくださいね!応援しています! (2020年1月9日 0時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Drastic1/
作成日時:2018年3月28日 22時