『その背を止められやしないから』五 ページ31
首を巡らせた先を見た太宰が、うわ最悪、と零す。気分良さそうに太宰を眺めた中也が、そこで笑みをひそませた。
「で、何しに来やがった」
刹那に太宰の瞳が闇色に沈む。
「＿＿＿私の紫宛君を返して」
凍てついているに近い眼差しを浴びて、寧ろ中也は笑みを深める。ざまあみろ、という顔だ。
「ハッ、四年半前そっくりそのままじゃねえか。笑えるぜ。さんざ追いかけて置いて最後に逃げられるたァ、色男の名が泣くなァ太宰」
「五月蠅いな、君。身長は成長しないのに口ばっかり達者だね」
「背の高さは関係ねェだろうが！」
くわっと一瞬で怒声が飛んでくる。
分かりやすい。太宰はさりげなく中也の後ろに目を遣って人影を探すが、扉の開いた先に他の影は見当たらない。中也一人だ。
六院を幹部に据えたのは想定外だが、用心深い森さんの事だから監視のため中也と組ませているかもしれないと期待したのだが。
目敏い中也が視線とその意味に気付く。
「彼奴が気になるか？」
「別に」
「読まれてんぞ手前」
「……何？」
「広津の連絡で捕縛を知るより前に、彼奴が言ってたんだよ。今夜中に太宰が動くってな。それで？ 動いたはいいがヘマして組織に捕まったか？ なまってんじゃねえのか手前」
太宰は応じず、僅かに瞳に暗い部分を増大させながら、じっと中也を見る。おもむろに口を開いたのはその後だ。
「中也こそ、知っているかい。彼がマフィアに戻ってくるまで、何処に居たのか」
「あ？ 知らねーよ。どうせ何処かの非合法組織だろ」
そこで中也は首を傾げる。
「あれ？ だとすると、何で手前が彼奴に絡んでくんだよ。芥川の話じゃ今お人よし集団で探偵やってンだろうが」
引っ掛かったな、と太宰の目が細められた。
「やっぱり聞いていないんだね。よし、取引しようじゃないか」
「断る」
「……判断が早かったね。紫宛君に何か吹き込まれてる？」
「元相棒の経験則だよ。第六感でも善いな。とかく手前と取引はしねえ、結末が見えてやがる」
中也が腕を組んで横を向く。
「あぁそう。不利な条件を呑まされるのが怖いんだね、そっかそっか中也には昔っから私に迷惑行為を繰り返されて耐性が付いていると思ったのだけれど、そんなビビリじゃまだまだだったようだね」
「……オイ」
中也が厭そうに顔を顰めた。乗せられた人間の表情だ。こういう時は彼が相手だと大変助かる、と太宰は単純明快な情緒に感謝する。
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リゼ(プロフ) - とても面白くて3週してしまいました(笑)作者様の思い描く物語がどう展開していくのか全く想像できないので、楽しく読ませてもらっております。いつも作者様のこの作品を心待ちにしています！！大変だとは思いますが、頑張ってください。応援しています！！！ (2021年7月10日 11時) (
レス) id: b15481d520 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» わあああ！！お久しぶりです覚えててくれたんですね！！！(´；ω；｀) がんばりますーーー！ (2021年6月10日 22時) (レス) id: d65e81f2c3 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わぁあ待ってました！！再連載ありがとうございます！！ (2021年6月10日 17時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - ういろうさん» ありがとうございます、遅くなっちゃいましたね。できる範囲で進めていこうと思います。コメントありがとうございました。 (2021年6月10日 2時) (レス) id: 2f72b0193e (このIDを非表示/違反報告)
ういろう - とても面白いです！六院さんの破綻された性格がすごく好きです!!続きも気になりますがあまり無理しないでくださいね！応援しています！ (2020年1月9日 0時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Drastic1/
作成日時：2018年3月28日 22時
