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【番外編/届かない慟哭を君に(太宰)】 ページ26

太宰は側に立って、その顔色が随分悪いことに気が付いた。白く見えたのはこのせいだろう。強張る手で、気取られないように布団をめくる。薄手の白いシャツ。

「……!」

___赤が見えた。

捲った表紙に僅かに開いた隙間から見えた白い肌に、一瞬だけ別の感情が過ぎる。太宰は其れを、長い瞬きで遣り過ごした。

一見したところ、今回は異能を使っていないらしい。新たな痣の痕跡は無かった。ほっと胸を撫で下ろして、布団をかけて遣る。小さく寝息をたてて、太宰の存在など知る由もなく、六院は夢の世界に。

整った鼻梁と、形の良い口。
柔らかそうな薄茶の髪。その彼が瞳を閉じると、長い睫毛がいろどる端正な顔は、まるで天使のようで。


『お前の助けなんていらない』
その言葉が。

『異能に取り殺されることが何だって言うんだよ』
どんなに残酷なものか。きっと君は知らないんだろう。

『そんなのとっくに、わかってる』
かりに君が分かって、受け入れたとしても、私にはそれは出来ない。

『この命くらい呉れてやる』
なぜ、君は君を大事にしてくれないのだろう。



太宰から、ふと表情が消えた。だらりと垂れ下がった腕が力なくぶらさがる。蓬髪の前髪は、表情を隠した。

___この子はいつか、居なくなる。自分から進んで破滅に向かう。私の元から離れ、遠く、手の届かない場所へ。

ついぞ外れたことのない直感だから、気のせいだと思い込むことすらできない。
指先が冷え切っていた。ゆっくりと、両手をのばす。その細い首に、手を掛けた。


「愛している」

だからお願い、死にたがるならせめて、私に殺されてくれないか。




【誰も知らない部屋の片隅で、一人の黒が祈っていた。】(番外編・終)

『その背を止められやしないから』一→←【番外編/届かない慟哭を君に(太宰)】



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リゼ(プロフ) - とても面白くて3週してしまいました(笑)作者様の思い描く物語がどう展開していくのか全く想像できないので、楽しく読ませてもらっております。いつも作者様のこの作品を心待ちにしています!!大変だとは思いますが、頑張ってください。応援しています!!! (2021年7月10日 11時) (レス) id: b15481d520 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» わあああ!!お久しぶりです覚えててくれたんですね!!!(´;ω;`) がんばりますーーー! (2021年6月10日 22時) (レス) id: d65e81f2c3 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わぁあ待ってました!!再連載ありがとうございます!! (2021年6月10日 17時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういろうさん» ありがとうございます、遅くなっちゃいましたね。できる範囲で進めていこうと思います。コメントありがとうございました。 (2021年6月10日 2時) (レス) id: 2f72b0193e (このIDを非表示/違反報告)
ういろう - とても面白いです!六院さんの破綻された性格がすごく好きです!!続きも気になりますがあまり無理しないでくださいね!応援しています! (2020年1月9日 0時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Drastic1/  
作成日時:2018年3月28日 22時

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