【文スト】中原中也の新相棒には問題があり過ぎる。【中原中也】【男主】

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「あー……」

厭だ厭だ、これだから、マフィアってのは。

十六夜は燦然と輝く月を見上げ、髪を掻き上げる。月光を反射する金髪が少し顔に掛かった。これから、如何しようか。如何したものか。

「勘が良すぎるんだよね、あの首領」

すげー、遣り辛い。


フッと笑って、手を下げる。下ろされた前髪が表情を隠した。


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十六夜は、何者か。

三日ほど前に突然現れて此方の日常をかき回し、局所的に鋭さを見せつけながら、飄々として正体を明かさない男。

謎すぎる状況が、中也の頭を悩ませていた。
首領からの指示だというのに、出自はおろか姓名まで分からない。議論にのぼった奴の異能についても詳細はまだだ。

本人から聞き出そうにも、そう簡単には応じないだろう。

「チッ……手が掛かりやがる」


首領は、三日後に十六夜を連れて執務室に来るように言っていた。それまでに調査に区切りを付けておきたいのに。
携帯に着信が訪れる。部下の名前。


「……何だ」

『仰せつかっていた件、空振りでした。“十六夜”という苗字は存在しません(・・・・・・)。中原さんの相棒は偽名を名乗っています』

何か思う前に、そうだろうな、と口から出ていた。電話口の相手が躊躇し、先を言いよどむ。

「他に何か分かったか？」

『いえ。何も分かりませんでした。抹消されています。誰かの手で、執拗に』

「そうかよ」

空振りに終わる結果も少しは予想していたが、視線が鋭くなっていくのは止められない。これが良い状況でないのは明らかだった。願わくば、想像以上に厄介な事態にならないで欲しいものだ。その期待も、幾ら叶えられるかは分からないが。


「まァ、善い。分からねえことが分かったってのも収穫だ。ただ、この件の調査は打ち切りだな。これ以上は遣っても成果がなさそうだ」

『……あの、一つ良いでしょうか』

「何だ、言ってみろ」

『執拗に消された可能性の他に、もう一つ。愚見ですが、海外に居た可能性があるのではないかと考えられます』

「海外だと？」

『調査は横浜よりも広範囲に渡って行いました。そして遂に昨日、範囲は日本全域に及びました。それでもポートマフィア傘下に入る以前の痕跡がなかったので……』

「その前までは日本に居なかった可能性……ってか」


相手の相槌を聞きながら、十六夜の顔を思い浮かべる。
ポーカーをする奴の顔が脳内に蘇った。目を伏せる横顔は、まるで知らない人間だった。

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