【文スト】中原中也の新相棒には問題があり過ぎる。【中原中也】【男主】

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十六夜はじーっと俺の顔を見てから、ふぅ、と溜息を吐いた。
人の顔見て溜息吐くかよ。


「………おたくの名前は？」

「中原中也だ。首領から聞いてねーのか？」

「眠かったので。」


つまり話など全く聞いてませんでしたと。

いや相手、ポートマフィアの首領だぞ？
逆らったとでも思われたら、生まれてきたことを後悔するような拷問が待っている。

お前の心は鋼なのか？


「ま、電話だったしね。」

気のない様子で一言付け足すと、奴はようやく胡坐を崩して立ち上がった。で、一言。


「うっわ思ったよりちっさ！」

よし、殺そう。

反射的にＴシャツの襟を掴み上げ、怒りの籠った手をぐぐぐぐぐと握り締める。
奴はもろ手をあげ、表情を変えないまま棒読みでこう云った。


「わー勘弁、暴力反対！ ってか俺、戦えないし。」

……は？

後半の台詞に怒りが吹っ飛ぶ。
殴ろうとしていた手ごと固まり、呆気にとられた顔で思わず奴を見上げた。


「戦えない？」

「うん」

「……全く、全然ダメか。異能を使っても？」

「うん」


けろっとした顔で云う十六夜。本気で言ってんのか？

俺の新相棒がニートな上に、全く戦えない……だと？

今一度、視線を落とし、身体つきを目で確かめた。
脂肪の類は一切見られないが、かといって筋肉がついているわけでもない痩躯だ。

確かに、攻撃を繰り出す身体ではない。

…………。
奴の襟を放してやり、改まって向き直り、琥珀の瞳を覗き込んだ。



「手前、名前は」

「十六夜でーす」

「……首領が云ってた名前と一緒じゃねえか。ったくどうなってやがる」

「人違いだと思った？ 酷いなぁ、同姓同名の人物は存在しないよ？」

「だろうな」


再びの沈黙。
どうしたものだか思考を巡らせて、とりあえず最初に取るべき行動に立ち返った。


「……ひとまず手前を連れて拠点に戻るぞ。異論は？」

「はい。働きたくな」


腹を殴った。
奴は、ぐえ、とアホな声を発して腹を抑えた。胸がスッとした。



・
・
・


「おい、いつまでもノビてんじゃねえ。車を待機させてある。さっさと行くぞ」

「いきなり殴るなんて野蛮だなぁ、凶悪チビ」

「チビは関係ないだろ！」

「はぁ。俺、この野蛮人と組むのかぁ……変更効かないかな」

「無視すんな」



十六夜が溜息を吐いた。物憂げな表情もサマになる、端正な顔で。
だが一つ云っておく。

コンビ変更ならもう、俺は百回以上は考えたぜ。

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